キリリク&記念小説

□20万hitキリリク小説
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智哉の部屋に泊まって迎えた朝――

先に目覚めた俺は身を起こし、隣で眠っている彼の寝顔にカメラ付き携帯の照準を合わせる。

普段は鈍いわりに、シャッター音に即応した智哉は薄く目を開けた。


「ん……?」

「へっへー。寝顔撮っちゃった」

「え、えー……?」


得意になる俺を前に、眩しげに眉を寄せて上半身を起こす智哉。


「やめてよー。無防備なとこ撮るとか」

「俺しか見ねぇから許せよ。ほら、色っぽく撮れてるよー」


俺は携帯の画面を智哉に見せた。


「俺こんな顔して寝てんだー……初めて見た」


ツッコむのも面倒になるような間抜けなコメントだ。


「な、な、今度はツーショットで撮ろう!」


俺は彼の顔に自らの顔を隣り合わせ、撮影を試みる。

出来た写メをふたりで覗き込んだ。

うん、仲良さそうだ。よく撮れてる。

俺は上機嫌になり、智哉の携帯に転送するよ、と言って操作を始めようとした。

しかし――


「……ん、あ、いいよ。千景が持っててくれれば」


智哉の返答は、頭に石を投げつけられたようなショックを俺に与えた。


「なんで? 持ってるのイヤなの?」

「イヤじゃないんだけど……」


フツウ、恋人の写真って欲しいと思うんじゃねぇ!?


俺、気づいてんだぞ。

ダブル世界戦のために撮影したポスター、クローゼットの開き戸の内側にずーーっと貼ってること。

智哉と阿波野さんが並んでファイティングポーズとって写ってるヤツだ。

――なのに俺とのツーショット写真は、携帯の中に隠し持つことさえイヤだってのか!?


「あっ、もうこんな時間だ。ロードワーク行ってくる!」


智哉は慌てた様子でベッドから抜け出し、身支度を始めた。

俺もたかだか写メ一枚で文句をたれるのがバカらしくなってきて、大人しく彼を送り出すことにした。

でもなんか――モヤモヤが消えない。



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