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□140字SS 愛読書
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愛読書

1
「あっ…」机上整理中に資料の中から私物と思われる雑誌を見つける「おっ最新号、俺まだ読んでないんすよ」猥談担当の少尉も愛読している情報誌らしい「あ、中尉は読んじゃ駄目ッス」「あら、どうして?」中身を確かめようとしただけなのに…危ないよなと、男はつぶやいて私の好奇心とやらをなじった。

2
「理由?そんなもん大佐から…あ、駄目ですよ」ハボック少尉は私が見つけた情報誌を素早く手に取りポケットにねじ込むと、「上官命令なんです。すんません、中尉。いろいろ事情があって俺も苦労しちゃってるんです」ちょっと短くなった前髪を触りながら深いため息を零す。もう、上手くいかないものね。

3
「アレはあいつが頼まれたんじゃないですか?中尉はお守りで忙しいって先月、犬の散歩をハボに頼んで仲良しこよしで羨ま…いや、俺も気をつけろって話したんですけどあの馬鹿ついうっかりで悪気は無し…あ、まだ話は終わってませんよ」昼食を終えてブレダ少尉にお礼を伝えると、約束の時間が迫っていた

4
「珈琲はブラック?嫌ね、男の趣味かしら?」「もう、レベッカ。飲み過ぎよ」生ビール始めました、の謳い文句につられた親友はトロンとした目で犬の背中を撫でる「大丈夫よ、ダイジョーブ。うふふ」半休なら奢りなさいよと電話口での口調に心配して来てよかった…「きゅーん」ハヤテ号には災難だけどね

5
レベッカに相談すれば解決するんじゃないかと思っていた。「皆、私には関係ないって言うの…ゴミの日に出しましょうか?って大佐に聞いても苦い顔をされるし」「大変ね」「少尉は前髪の心配ばかりだし」「災難ね」でも、彼女は相づちを打つと一言「ふーん…で、リザはどうしたいわけ?」私の気持ちを?

6
「私は書類の整理をしなくちゃって」「嘘、本当の気持ちを言いなさいよ」机上整頓の理由なんて…黙ってしまう私にレベッカは、「私物だけど気になるならはっきり伝えてみなさい」と言ってハヤテ号をもう一度撫でると、会計を済ませて帰ってしまう。冷めてしまった珈琲に未解決の事柄が残る憂鬱な水曜日
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