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□林檎と嘘
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皮の廃棄をしようと錬成陣にふと思いついた式を加えて…閃光と共に現れたのは透明なスライム状の何かで。それは身体をくねらせて蕪畑の方へ走り去っていくー「ふっ…また、つまらないものを作ってしまった」「大佐、遊んでないで下さい」「いや、ゴミを棄てようとしてだな」新しい方法を試しただけだ。


「それより味見をしないのか」「数が足りなくなります」早くも焼き上がった菓子を前に最初の一口をせがむも彼女の態度は冷たい「少しの糖分も必要で…」「大佐は昨日もそう言って持ち込んだおやつを食べてました」食べた分だけ身に付いてしまう体質という理由で代わりにハボックを呼べと言われてしまう。


私は義眼付きの目隠しをしたハボックを連れて戻ると、旨いか否かだけでいいから教えろと、試作を食べさせる「俺は良いところに連れていくってあんたが言うから…あ、甘い!」「旨いのか?」「母ちゃんが作ってくれたパイの味がします」母ちゃんに会いたいな〜と叫ぶ部下より先に私が…味見をしたかった。


一日限定五個の褒美の品を初めは待ち遠しいと楽しみにしていた奴等も。熱々の焼き菓子を中庭に引き取りに来るように雨の日は中止。というキーワードに何かに勘づいたようで…私がついた嘘はそうそうにバレてしまっていた「中尉のアップルパイ旨いっすね」「私も…」「大佐はダメって中尉が」「何だと!?」


私は食べるのを禁じられているのが解せぬと言えば…「そりゃアップルの嘘ついた罰ですね」部下の妄言にいやいや昔は食べさせてもらえたはずだろうと、古い記憶の扉を開けてー始めてにしてはよくやった、と声をかけたい出来の焦げた酸味の強いアップルパイを黙々と二人で食べている姿を思い出していた。


私は家庭の味がする焼き菓子作りは覚えておいて損はないと、次回作に望みを託して少女を励ましていた『リザも大きくなったら分かるよ。大切なひとと一緒に食卓を囲む昼…』『大切なひとですか…』彼女は何かを考えていたが一つ頷くと、勉強してみますと言ってにっこりと微笑んでくれた。あれから数年ー


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