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□林檎と嘘
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2020林檎と嘘


大通りの車道で起こった謎の陥没事故に対応して、急ピッチで進めた道路復旧の作業に「グレイシアのアップルパイ」を褒美にしたところ予想外にハボック隊からの参加が多かった。後日…「やあ、ヒューズ。この間頼んでいた焼き菓子五十個の件だが…」ガチャン!すげなく、親友に断られたとは皆に言えまい。


今回ばかりは反故には出来ないと、なんとかヒューズからもぎ取ったレシピを持って私の副官に対策を依頼した「君と私と供に考えれば、この難局もきっと乗りきれるはずだ」「嘘は直ぐに分かってしまいますから」菓子は無いと謝ったほうが良いと言う助言を貰ったが…「中尉…君にしか頼めないんだ」「…」


「君と私で力を合わせてだな」「はい」「石窯と材料は確保したから」「はい…」真剣に焼き菓子を五十個。近日中にハボック達へ渡す手立てを考える私に比べ彼女の反応は薄い「無理でもやるしかないんだよ」「…承知しました。一日五個までなら」箱入りの林檎を前にして一時間。苦労して協力を取り付けた。


「まだ届いていない」「…あんたを疑っちゃいませんが配給日くらい決めて下さいよ」「数も多いから時間もかかる」早く褒美が食べたいと騒ぐ部下を苦労して宥めていた。まだ窯を用意したばかりだとは言えるわけなかろう。いや、試作くらいは出来ているか。催促された訳ではないが中庭に取りに行くことに。


新規に搬入した石窯の前にて、独りでちまちまと林檎の皮を剥いていた副官に「やあ、中尉。私も一緒に…」急ぎ走りよると手伝いたい旨を伝える「こちらとそちらは私が大佐は生地を」「私も皮を剥こう」少しだけ眉を寄せた君に「まずは林檎を片付けてからだ。秘策もあるぞ」急ぎ持参したアレを披露した。


「どうだね?」「作業効率が上がります」くるくると林檎が回るこの道具は贔屓客の東方土産だと店のマダムが梨をシャリシャリ剥いていたのを見て。これはと閃いた私がこっそり拝借してきたものだ。林檎との相性も頗るよかった。皮を剥き終わると彼女は窯の用意をするらしい。私は…ゴミの始末をするか。


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