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□140字 6(恋愛指南)
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ビールを飲みながら、「戯れが過ぎますよ」「はっ?君だって乗り気で」「そんなつもり…これは人助けですから」「本当に?」「はい」険悪なムードだ。女たらしな大佐はノリノリだったけどさ。照れ屋な中尉にはちょっとキツかったらしい。お代わりした大ジョッキを照れ隠しにか中尉は三口で空にした。


二人に相談したの間違いだったかもな〜中尉は経験値無さそうだし、大佐は浮き名を流しちゃいるけど…アレだしな。「あの〜やっぱり、自分の力でなんとかしてみますよ」「どうして!?」にらみ合いを中断した二人は声をハモらせてこっちを見る。「誠実な心で勝負します」あんた達見ていたら…なんかね。

「あてはあるのか?」「えーと中佐が宴席で講義してる恋愛指南に参加してとか…」既婚者に聞いてみるのが正解かもしんねーし。「ヒューズの与太話などあてにならん」「妻帯してますし…」「奴の細君が理解あるひとだからだ」中佐と張り合うように、「奴より私の方が彼女との絆が深い」大佐はいい募る。


どうやら大佐は新しい女と大恋愛中らしい。自慢話だけは勘弁してほしいぜ。「中尉は好きなひといるんですか?」暑苦しい男を横目に微酔いの中尉に話をふる。「…私?」目を伏せて少し恥ずかしそうに…「そうね…守りたいひとならいるわ」何ですか!それ!?乙女の恥じらい付きの爆弾発言が飛び出した。

「私は一番じゃなくていいの」「…」「…形なんて要らないのよ」大ジョッキを二口で飲み終わると固唾をのむ男二人を前にしての意味深な発言…まさか、不倫とか?「背中の誓いが…」「待て!ちゅ…」「大事な話の途中なんスよ!」あんたは尻の軽い女がいるでしょーに!大佐を押し退けて続きを期待した。

「…だから、あの人が生きててくれたら、いいの…結婚?私はいいの」どうやら人目を憚る路ならぬ恋らしく、ジョッキを重ねて尋ねても相手への彼女の口は堅かった。やっぱ不倫か?「畜生!なんて野郎なんだ」「違うの私が…」「日陰者扱いなんて!」憤慨する俺と違い大佐は借りてきた猫みたいに静かだ。


「初恋で…」「駄目、実らないでスって」「私にしか頼めない約束があって…」「騙されてるんです」惚れた男の為に彼女は尽くして来たらしい…なんか胸の辺りがモヤモヤしてきた。「目を覚ましましょう、俺も大佐も相談に乗りますから…ね。大佐?」「うむ…」言葉少なな大佐と二人彼女を励ましていた。

 
 
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