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□バラの下で
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早朝までの特別勤務が終わり。引き継ぎを済ませば、ハヤテ号の世話をして暫しの休息も…と考えていた矢先だった。「すまないが今晩も頼めないか」「大佐?」「緊急を要するんだ。その…今朝の」「はい?」「いや、今晩だ」真剣な眼をして君にしかできないと、言われては私には断ることなど出来なくて。


「マジっすか?今晩も中尉だなんて」「ちょっと少尉。声が大きいわ」食堂で休憩。同僚に相談事があって…「あの人の頼みだから断れないの」「一晩過ごしたばかりなのに…」「私は平気よ」「毎晩でも?」「お望みなら…ね」マジっすか!?と、もう一度少尉は大声で繰り返してからそっと耳打ちをしてくる。


「例の件は大丈夫でしたか?俺んときは何とかなりましたけど…」「ええ…」「やっぱり同じことされたんですか。えっ、声がちっちゃくて聞こえないっすよ。違うんですか…残念。もしもの時はチョイっとしてパーとヤれば大丈夫っす。頭より体で覚えちまうほうが…」相談する相手を間違えたかもしれない。


そして本日、六日目の夜が来た。赤い蕪というテロリストから名指しで狙われてしまった大佐を警護する為に私達マスタング組は毎晩、交代制で特別勤務についていた。四日目にハボック少尉が捕縛した刺客から、組織に繋がる情報がとれていると良いけれど…夕方からシトシトと降りだした雨はまだやまない。


例の件も少尉で無理ならレベッカかしら…いいえ、個人的なことを考えるのは後にしないと。寝台と最低限の調度品があるだけの簡素な部屋の中で私が昨日、待機場所に確保したソファに座り銃器まで携帯している警護対象者にまずは一言「大佐。不寝番はお任せください」「ああ、その件についてなんだが…」


「今朝の…いや、今夜は私が見張りをするから君は休みたまえ」何かを言いかけて後、大佐は思いがけないことを言い出した「そんなことをされては困ります」そんな提案は呑めないと撥ね付ければ命令だと押し返される。お互いに譲らないまま「わかった、わかった。それなら真ん中をとってだな。一緒に…」
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