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□140字 3(海に行こう。)
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海に行こう


「喜べ!我々は明日からバカンスに向かう」「閣下!?」私の宣言に悲鳴と歓喜が飛び交う―「大丈夫だ、カラクリ仕掛けの身代り人形も作った…」と副官の説得に日夜尽力した末に使令を下した。「臨時列車を仕立て国境を越える。急げ、未明に出立だ!」ついに私のもう一つの野望が果たされる日が来た。


「寒い!」シーズンを少し過ぎていた為に海辺は閑散として風は冷たい。「私のイメージしていた海と違う…」素肌にまとった黒コートを掻き寄せる。薄曇りの空、太陽の光は弱々しい。「帰りたいな…」「なっ…!さっき着いたばかりでスよ!?」「ビキニの美女も太ももハーレムも見れないんだぞ!」「…」

「あぁ、長年の努力が水泡に帰したのか…神よ、貴方の僕は度重なる困難を乗り越えて、忠実に示された役目を果たしたのです。なのに…何故?貴方は…約束を違えるのでしょう!?おお神よ…」「あのー閣下、そろそろ服着ませんか?パンイチでコート姿って、変質者っぽいっスよ」「…貴様も同じだろう」


「俺はセーフです」どう見てもアウトだろう…「閣下が我が侭いうから…」「煩いな、ハボック」筋トレ代わりに五体投地していた私に対して閣下、閣下閣下閣下…と部下が煩い。「そうだな…今は忍びだから閣下は不味いな」若かりし日々を思い出してみるか…「ハボック少佐、私を大佐と呼びたまえ」「?」

仕方ない…今日は金髪美女一人で我慢しよう。明日になれば浜辺が美女で溢れているかもしれん。「プライベートビーチだと思えばよかろう」「ご都合主義的ポジティブ思考っスね」「黙れ」「はいはい」「私はここを夏の避暑地にして合コンを開催する」「マジすか!?」「ジョークだ」馬鹿者、落胆するな。

「う〜む。眩しい…」「閣下?」海水浴場にてショートパンツにパーカーとは…本日の天候では致し方ないか。服の裾から覗く太ももが拝めただけ好としよう。「君は変わらないな…」腰を引き寄せるとぺちんと叩き落とされた。「少しくらいサービスしてくれてもいいじゃないか」照れ屋な所も変わらないか。


「君は塩焼きそばでも作っていたまえ」サービスするのは私だけでよかろうと思い室内作業を頼んだ。「あれ?大尉はどこッスか〜」「ここにはもう居ないぞ」「そんな…ピチピチむちんな太ももが拝みたかったのに」「安全な場所にいる。ここは変態がいるから物騒でな」「うう…残念」クソッ油断も隙もない

「邪な目で見るな!穢れてしまうだろう」「そんな〜減るもんでもないのに…」見世物ではない、と浜辺に乗りつけた汽車の前から変態を追い払う。「まったく、だから早く一緒に暮らそうと…」つい愚痴が出てしまう。彼女が選んでくれた。アロハシャツに描かれたブチクスクスが私を笑っているようだった。

「猿なのかアルマジロなのか判らんな…」一般的にはアウトだろう。しかし、独特なセンスの主である彼女のツボにハマってしまったのだろうか。「あぁ、普通のアロハシャツが着たかったな」「すみません、変なアロハで」「うん。そうなんだ…って大尉!?」不意に車窓から副官の冷やかな声がした。まずい


「返して下さい!」「私が財布を出した物だ!」嫌なら着るなと強引に着脱されそうになる。「この柄を着ていたい!」「嘘つかないで下さい」「本当だ、その…君が色違いを購入するならと」隙を突いて己より一回り小さな身体を腕の中に閉じ込める。「嫌だったか?」「馬鹿…」悪くないって顔だな、リザ。  
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