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□残念ながらべた惚れ
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静かな図書館にシャーペンの音が響く。この音を聞くと妙に焦ってしまう。勉強なんて、数学なんて特に嫌いだ。
元々、こういった場所で勉強をするのは好きではなかった。自宅で勉強するよりも、何だか緊張してしまうから。でも今日は特別。



「…できた?」
「できるはずないでしょ。私の成績知ってる癖に」



ぼそぼそと小声で言葉を交わす私達。今日は神が勉強を教えてくれるというから、ここに来ている。

けれど、人の助けがあっても赤点常習犯の私に苦手な数学の問題がすらすら解けるはずもなく。
普段から頑張ってる神は、既に問題集の二周目に取り掛かろうとしている。



「少し休憩にする?」
「…そうする」
「それじゃ、外に出ようか」



開始一時間半で何故か心身ともに疲弊しきっている私。分からない問題を理解しようとするのは、やはり疲れるものだ。
一旦休憩スペースに移動して、側にあった椅子に腰掛ける。

ちらりと横目で神を見てみる。私の視線に気づくと、澄ました顔で此方を見つめ返してくる。



「…神は、すごいね」
「どうしたの?なまえが俺のこと褒めるなんて」
「いつも結構褒めてる気がするんだけど」



聞けば神は否定するけど、バスケ部の練習だってI.H常連の海南は相当厳しいはず。
それなのに疲れた素振りも見せないで、私に勉強を教えてくれる所とか。
何にでも、一生懸命な所とか。真面目な所とか。全部が。私には輝いて見える。時にはまぶし過ぎるくらいに。



「ちょっとだけ、寂しいかも」
「神って何でもできるから。何にでも全力で頑張れるから」



だから、たまに怖くなる。このまま私達の距離がどんどん開いていっちゃうんじゃないかって。
言葉にできないくらい、私だって神のことが好き。でも好きすぎるせいで、冷静じゃいられなくなる時もある。

神はそんな私の話を黙って聞いてくれる。そんな所も大好きで。



「なまえは、心配症だなぁ」
「でも」
「俺はどこにも行かないよ」



そう言って見せる、余裕の笑みに私の心臓は自然と早鐘を打つ。
神には私の全てを見透かされてるような気がする。いや、もしかしたら本当にそうなのかもしれない。



「恥ずかしいからそういうこと外で言わないでよ…」
「なまえだってさっき相当恥ずかしいこと言ってたじゃない。そのお返し」
「…」
「さ、続きやろっか。行こう」



すっと立ち上がる神。何度その黒い瞳に吸い込まれそうになっただろう。
きっと暫くは、この不安定な気持ちが消えることは無さそうだ。
けれど、それでもいいかな、なんて思える私はどれだけ神に溺れているんだろう。







残念ながらべた惚れ

(好き過ぎて、おかしくなりそう)

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