源氏物語【桐壺の章】

□今上帝
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「チビ、早く抱かせろ」

俺は今、帝を相手に絶句していた…


「お前、名は」

「えっ、あ…桐壷と申します」

会って早々《抱かせろ》って、愛想もなにもねぇな!!だいたい名を聞くのは自分が先に名乗ってからだろ?!普通は!とかイロイロ言ってやりたいけどコイツは帝だ、落ち着け俺…落ち着くんだ…

「桐壷ねぇ…歳は」

「はい、15でございます」

「数えか?」

「いえ…」

「そうか…15か…」

何だぁ?歳とか関係あんのか?
この世の中来るもん来たら10の奴も入内する世だ可笑しくも何もないだろ!!

「いかがいたしましたか?」

「…15にしては小さいな、胸」

《プッチーン》
まだ発展途上だバカヤロー!!!!

「まぁ、抱いてみたらイメージも変わるか…せいぜい良い声で啼けよ」

「………ッ…」

そうだよ、抱くんだよな、コイツが俺を………………もし、この場で子が出来たらこの先何回も辛い思いをしなくて済むかもれない…でもさ…やっぱ……さ

「…………」

せめて初めては好きな人とが良かったよなぁ…とか思うんだよな…

「おいテメェ」

「…はい?」

「何故泣く」

「泣、く……?」

頬を確かに雫が伝っていた。
帝にだけは見られてはならないソレは止まる事も無く頬を伝っていく…

「な、何分緊張してしまい…」

…嘘だ

「あまりに帝がお美しく」

怖い、でも…

「…チッ……萎えた」

「え?」

「肩を震わし泣きながら、それでも抱かれようとする奴なんて抱いても意味がない」

「み、帝?」

それって…

「一夜を共にしないと言う事でございますか?」


う、嬉しいけど…それじゃ立場が無くなる…薫やお母様にも迷惑がかかるかもしれない


「か、肩は武者震い、涙は緊張でございます、決して帝を怖れたわけでは」

「武者震い、か」


―ドサ。


「本当に武者震いなら、覚悟が出来てるって事だな、チビ」

一瞬、何がどうなっているのかった。さっきまで前にいた帝野郎(野郎で十分だ!)は上にいて、俺は下…いつの間にか押し倒されている

「覚悟出来てるなら、良いよなヤッても」

単を少しずらし首筋に息を当てられ気持ち悪い感覚が全身に伝わる

「……ッ!!嫌ッ!!!!」ドンッ

思わず帝を突き飛ばし距離とる。やっちゃった…帝に手を…
薫、母様、女房達…俺のせいで家が断絶するかもしれない…ごめん。ごめん、

「み、帝!!」

「…チッ…嫌なら強がるな。さっきも言っただろ萎えたって」

「申し訳…って、え?」

「萎えた。だからと言って何もせず帰したらお前の面目がつかないだろ…だから証を付けようとしただけだ」

「証…」

帝は俺が思ってたよりも
俺の事を考えてたって訳か?

「帝、ありがとうございます」

「ふんっ……」

「俺…じゃなかった、私はこの恩義忘れません」

「俺? お前、女なのに俺と言うのか」

「す、すみません!…何分、男系家族の間で育ち父も早くに亡くした為嗜められる事無く…」

「面白いな…いい、素で話せ、敬語も使うな、ここにはお前と俺しか居ない」

「え、でも…良いのですか?」

「聞いて見たい。外の五月蝿い小姑達もそろそろ寝ただろうしな」

あとで聞くと、この帝。
毎夜見張られるの事が面倒で女房達の食事に一服盛ったらしい…帝ってこんな事して良いのか?

「…お前。変なヤツだな。」

「それが素か」

「そうだよ、悪いか」

「仮にも今上帝の前でその態度とはな」

「お前が良いったんだろ!!…それに多分お前そんな悪いヤツじゃないだろ、だから多分大丈夫だ!!多分」

「信用ねぇじゃねぇか…」

「あはは!!」


それから朝まで俺達は定められた行為をせずに褥の上でお互いの悪口を言い合った。
本当に帝は俺に手を出すことが無く、コイツは案外良いヤツだと俺の本能がそう告げる。


「今日の夜また呼ぶ」

「え?で、でも…!!」

「何もしねぇよ、それともお前してほしいのか?」

「違う!!」

「来いよ、桐壷」

「ッ!!…わ、わかったよ」


この夜から俺は毎日、帝の寝所に呼ばれる事になる。
でも、それは最初嫌がっていた自分が恥ずかしいくらいに嬉しい事で同時に辛い事でもあった。

身分なんて気にした事が無かった。
自分は自分だから。

高貴な方が羨ましいとか思った事も無かった。

……今は羨ましい。だって…………

 
 

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