短編小説
□ミ・テ
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「イギリス」
俺はあからさまに暗いオーラを出しているイギリスに声をかけた。
「また落ち込んでるのかい。懲りないね。」
「…うるせぇな」
暗い理由は分かってる。大体の予想がつくだけに、俺は内心ため息をつく。
「…あのね、君がすることをどうこう言うつもりはないよ。だけどね、そうやってジメジメすんの止めてくれないかい?」
分かるからこそ。
あぁ、すっごくイライラする。
「うるせえ。イヤなら近寄るな。」
――イライラ
「どっかいけ。ばか。」
――イライラ
「…1人で、考えたいんだよ。」
――イラッ
気がつけば、パシンとイギリスの頬を叩いていた。
「…何で頼ってくれないんだよ!ばかはどっちだい!」
イギリスのきょとんとした顔が目に飛び込む。
こうなっては自分を制御出来なくなる。
「顔を合わせれば邪魔だ、迷惑かけたくない。聞き飽きたよそんなの!何で頼ってくれないんだい。言ってくれない方が迷惑だよ!」
――駄目だ。イギリスは傷つきやすいのに。
「信用できないならしなきゃ良いだろ!俺は君の信用なんてこれっぽっちもほしくないよ!ばかばかばか、君の方がよっぽどバカ!この世の中を憂うくらいなら死ぬくらい幸せになってみたらどうなんだい?!」
――駄目だ。止めろ。
「君がそんな顔してるから不幸だと思うんだぞ。君を不幸にしてるのは君自身だ!」
――止めろ!
この時、俺はハッと正気に戻った。
イギリスを見ると、ぽろぽろと涙を流している。
言い過ぎた。そう思ったが罪悪感は無かった。
「…俺が言いたいことはこれだけだよ。じゃあねバカイギリス。」
泣き顔のイギリスに背を向け、帰路についた。
家につくと、なにやら目眩がした。
熱を計ってみると、微熱が出ている。
「なれないことしたせいかな。」
重い体を引きずり、ベッドに倒れ込む。
「嫌われたかもな。」
あまりの自分の滑稽さにあきれ笑いが出た。
勢いではいた暴言は嘘ではなかった。しかし、打たれ弱いイギリスではどうなるか。
「まだまだだなぁ、俺も。」
小さい頃、イギリスから貰ったぬいぐるみを撫でる。
こんなに悲しいのに、涙も出ない自分がたまらなくイヤだった。
『ごめん』
背を向けたときにかすかに聞こえた言葉。
いやだ。謝らないで欲しい。ただ、頼って欲しかっただけなのに。
「ばか、イギリス。」
俺の気持ちは、届かない。