Script Space(台本置き場)
□画竜点睛
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=零章=
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語り「ある村に、有名な絵描きがやって参りました。絵描きは、一晩の宿のお礼にと村人の家の壁に守り神として龍を描きました。しかし、その目には何故か右目に瞳が描かれていません。村人は訪ねました。」
舞台、明かりがつく
村人「何故貴方の描く龍には、右目に瞳が描いていないのです?」
絵描き「瞳を描くと命が宿ってしまい、飛んでいってしまうからですよ。」
村人、ざわつく。
村人2「絵の龍なぞ、飛んでいく訳ないだろう。」
絵描き「いいえ、飛んでいきますとも。だから、くれぐれも目を書き足したりはなさいませぬように。」
絵描き、一礼して去る。
村人達もバラバラに去る
舞台、暗くなる。村人2が絵を見に来る
語り「その晩、絵描きの言葉が気になった村人の一人が絵を見に行きました。龍の絵にはやはり右目に瞳は描かれていません。」
村人2「…絵が飛び出す、か。本当なのかねぇ…」
語り「村人はふと、絵描きの言っていた事が本当なのか、試してみたくなりました。村人は辺りに落ちていた炭を拾い、両目に瞳を描きました。すると…」
雷がなり、板を突き破るような音
村人2「うっ…うゎああああ!?」
語り「いきなり空に雲が立ちこめ、雷が鳴り響き、村の近くの海の波が高くなったかと思うと、壁を突き破り、瞳を入れられた龍が空高く舞い上がったかと思うと、見る見る内に雲の中に吸い込まれていきました。村人は驚き、腰を抜かしてしまいました。」
絵描き「…言いつけに背き、目をかきましたね?」
村人2「!あんた…もう村を出たんじゃ…!?」
絵描き「あぁ、だから言ったのに。また異形の物を増やしてしまったよ。」
語り「いつのまにか絵描きは村人の側に立ち、空を見上げてため息一つ付きました。…空は既に雲もなくなり、美しい星空が輝いていたそうな…(本を閉じる)」