Script Space(台本置き場)

□PIERROT
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飛び降りをしようとしている少女。しかし躊躇している。

ピエロ「ねぇねぇ」
少女「止めたって無駄よ」
ピエロ「ねぇねぇねぇ」
少女「あっちいきなさいよ」
ピエロ「ねぇねぇねぇねぇ」
少女「うるさい。ほっといてよ」
ピエロ「ねぇねぇねぇねぇねぇ」
少女「(ため息)…何よ。」
ピエロ「笑顔はいかが?」

BGM&暗転
オープニングが流れ、ピエロにサス。

ピエロ「僕はピエロ。半人前のピエロット。人を笑わせるのが僕の仕事。人を笑わせるのが僕の幸せ。」

地明かり。少女がうつむいて座っている。

間。

ピエロ「(隣に座って肩をたたき)ねぇねぇ」

パッと花を出す

少女「うざい」
ピエロ「ごめん」
少女「…ねぇ」
ピエロ「うん?」
少女「こんな事して、何が楽しいの?」
ピエロ「何でって?」
少女「だから、人を笑わせて何がいいのさ。」
ピエロ「嬉しいからさ。」
少女「人が笑ってるのを見るのが?」
ピエロ「君はならないの。」
少女「ぜんっぜん」
ピエロ「残念だなぁ」
少女「人それぞれじゃない」
ピエロ「僕ピエロだし」
少女「その服脱いだらアンタだって人でしょ」
ピエロ「違うよ、ピエロだよ。」
少女「…まぁ何だって良いけど。」
ピエロ「じゃあ、君は何をすれば楽しいのさ。」
少女「何されても楽しくないわよ」
ピエロ「うっそだー」
少女「じゃなかったら自殺なんか考えないわ。」
ピエロ「死ぬ気なかったくせに」
少女「何でそんな事分かるのよ」
ピエロ「僕ピエロだもん。」
少女「訳分かんない」
ピエロ「ウソ、ほんとは分かんない」
少女「それみたことか」
ピエロ「でも、君が笑いたがってるのは分かる」
少女「私が。」
ピエロ「うん。」
少女「嘘つき」
ピエロ「ウソじゃない」
少女「何で分かるのよ」
ピエロ「ピエロだから」
少女「それさっきも聞いた。」
ピエロ「今度はウソじゃない。君は笑いたがってる。」
少女「だから、じゃあその自信は何なのよ」
ピエロ「ピエロがここに呼ばれた。それが理由。」
少女「アンタが勝手に来たんじゃない」
ピエロ「違う、呼ばれたの」
少女「もぅ、どっちでもいいわ。そんなに言うなら、じゃあ、仕方ないわね。責任もって笑わせなさいよ、この私を。」
ピエロ「おやすいごようさ、lady・hysteric」
少女「ヒステリックは余計。」

ピエロの演技

少女「ちっとも笑えないわ」
ピエロ「おかしいなぁ」
少女「ていうか、ピエロがマジックとかもするのって変じゃない?」
ピエロ「どうして。」
少女「だって、ピエロって普通サーカスにいて、玉乗りとかジャグリングをするものじゃないの?」
ピエロ「ピエロは人を楽しませるのが使命なの。だから技なんて固定しない。」
少女「変なの。」
ピエロ「僕の師匠はまんざいだってコサックダンスだって出来るよ」
少女「(ぷっと吹き出して)何それ、もっと変。」
ピエロ「あ」
少女「なに?」
ピエロ「笑ったね?」
少女「…あ。」
ピエロ「わぁい、笑った笑った」
少女「なんかその喜び方、ムカつく…」
ピエロ「君は僕の話聞いてて、楽しかったんでしょう?」
少女「…ん、まぁね。」
ピエロ「じゃあね、もっと話してあげる。僕の家族はもちろんだけど、皆ピエロで…」

BGM&暗転。
時々笑い声が響く。

明転

少女「あはは、それで?」
ピエロ「でね…あ、もうこんな真っ暗だよ。もう帰らなくちゃ。」
少女「貴方が?」
ピエロ「君がだよ」
少女「私…帰んなくても大丈夫よ。」
ピエロ「ダメだよ、風邪引くよ。」
少女「かまわないわ」
ピエロ「僕がかまうの」
少女「…心配してくれてるの?」
ピエロ「当たり前でしょ」
少女「嬉しい」
ピエロ「なぜ?」
少女「心配なんてされたことないから」
ピエロ「ウソ」
少女「本当よ」
ピエロ「お父さんとお母さんは?」
少女「喧嘩ばっかりで私のことなんか見てないわ」
ピエロ「友達は?」
少女「みぃんなうわべだけで、他人の心配なんてしないんだから」
ピエロ「ふうん」
少女「何よ」
ピエロ「寂しいんだ」
少女「違うわよ」
ピエロ「心配して欲しいんだ」
少女「そんな訳ないでしょ」
ピエロ「だから、ここに来て死のうと思った?」
少女「…」
ピエロ「あたりでしょ」
少女「…そうよ、何が悪いのよ。人間だし、ましてや私は小さいんだから、寂しかったり心配してほしいと思って何が悪いのよ。」
ピエロ「うん。」
少女「誰でも良いから、ちょっとでも良いから、心配して、撫でてくれるだけでよかったのよ。」
ピエロ「うん。」

辺りがガヤガヤと騒がしくなる。少女の普段見ている風景だ。

少女「いや…嫌っ!!」

だんだん音が大きくなり、五月蠅くなる。

少女「うるさいっ!」

ピエロがパンッと手を叩くと、辺りが静まる。その音にハッと少女が顔を上げる。

少女「だから、私は…」

風の音が響く。ぐらりと少女の体が揺れた時、ガシッと手をつかむ。

ピエロ「もういいよ、全部分かった。話してくれてありがとう。」
少女「…別に。私が話したかっただけよ」
ピエロ「まだ家に帰る勇気はない?」
少女「帰ったところで、何も変わってないわ。」
ピエロ「そうかな」
少女「そうでしょう」
ピエロ「まだ死にたい?」
少女「…そうは思わないわ」
ピエロ「なら、君はもう大丈夫」
少女「違う、貴方が居るから思わないだけ」
ピエロ「でも、僕は一緒に行くわけには行かない」
少女「なぜ?」
ピエロ「僕はピエロだから」
少女「関係ないわ」
ピエロ「あるよ。ピエロは一時の夢を魅せるだけの存在だから」
少女「じゃあ、貴方は幻?」
ピエロ「ううん」
少女「じゃあ貴方ってなに?ピエロって何なのよ。」
ピエロ「僕は、ピエロは…」

少女にニコ、と笑いかける。

ピエロ「君の、笑顔の化身」

いきなり照明が落ち、少女だけにサス。

少女「…何?ピエロ、どこにいったの…?」

立ち上がり、フラフラと手すりに手をついて身を乗り出した。

少女「何故だろう、あんなに真っ暗に見えていた夜景がきらきらと光って見えるなんて。」

ピエロがいつのまにか後ろにたっている。

ピエロ「世界は美しい。世界は楽しい。世界はおもしろい。それを目隠ししちゃってるのは、何を隠そう自分なのに。」
少女「こんな綺麗な所にいたのに、私は何故気づかなかったのだろう。足下の暗さに気を取られ、目の前のキラキラしたものが見えなかったのだろう。」
ピエロ「目隠しをとってあげるのは、僕の役目。笑顔を見るのは、僕の幸せ。」
少女「自然と笑顔がこぼれてく。」
ピエロ「笑顔はビロードみたいにキラキラしてて」
少女「世界がもっとキレイになる」

少女とピエロ、向き合う。
ピエロ「明日も」
少女「がんばろう」


BGM&暗転


少女にサス

少女「…ただいま…!(叩かれるようなフリ)…ごめんなさい!…え…心配…した?…本当に?…ごめんなさい…ありがとう…」

座って笑いながら少女を見るピエロ。

ピエロ「…そうそう、笑った方が人生楽しいよ。同じ人生なら、楽しい方が得でしょう?」

何処からか泣き声が聞こえる。

ピエロ「(泣き声が聞こえる方向を向いて)ねぇねぇ、笑顔はいかが?」

ピエロ、袖へ走っていく。


end

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