短編小説

□セツナレンサ
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気が付くと、知らない場所に立っていた。前には細く、長く続く一本道。そして少し前の記憶がまるでない。自分が何をしていたのかさえ分からない。状況が分からず立ち尽くしていると、後ろから聞き覚えのある声が聞こえた。

「政宗様。」

「小十郎?」
思わず振り返ろうとすると、小十郎がそれを制した。
「政宗様。振り向いてはなりませぬ。」
「な、何でだよ?」
「政宗様は、あの道をまっすぐ歩いていくのです。過去を振り返らず、ひたすら真っ直ぐに。」
「は?意味分かんねー…大体、此処は何処だよ。」
「…。」
小十郎は何も言わず、オレの肩に手を乗せた。
…この感覚に覚えがあった。そうだ、あの時。


オレは戦場にいた。小十郎と十万の部下。結果は此方側の勝利、勝ち鬨の声で溢れていた戦場で、いきなり小十郎が俺の名前を叫んで背中を庇った。
誰かが斬られたような鈍い音と、一瞬の殺陣音。

俺が振り返ろうとしたとき、小十郎はこのように手をかけて…


その後の記憶がない。


…否、


その後、気が付いたら此処にいたのだ。
小十郎は、肩に乗せている手を離そうとはしない。
「政宗様、貴方は立ち止まってはなりません。振り返ってはなりません。只只、あの道の果てまで歩き続けて下さい。」
「…小十郎は…?」
「私は残念ながら、一緒に行く事は出来ません。…ですが、これだけは忘れないで頂きたい。小十郎は、いつまでも貴方の背中を守っております。姿は見えなくとも、ずっと…」

小十郎がいるはずの後ろからは、血の匂いが香ってくる。

「ですから、貴方は後ろを見ず歩き続けて下さい。部下達の為、国の為…そして、民の為に。…この小十郎と、約束して頂けませんか?」
「…あぁ。約束する。」

目頭が熱くなる。拳を握り、俺は答えた。
姿は見えなかったが、小十郎が微笑んだ。そんな気がした。

「…では、御行き下さい政宗様。御武運を…お祈りしております。」

小十郎が、肩から手を離した。
と、同時にオレは歩き出す。一歩一歩、確実に。流れ、頬を伝う涙など気にせずに。
小十郎が付いてくる気配はなかったが、背中は小十郎が守ってくれている。そんな安心感が、いつまでもあった。




気が付いたら自分の部屋にいた。襖を開けながら思う。あれは夢だったのか…?
ふと、肩に触れてみた。微かに残っている、あの感覚。やはり夢ではない。

『いつまでも、貴方の背中を守っております。』

「…任せたぜ?小十郎…」

そう言い、オレは澄んだ空を仰いだ。



※あとがき※

RADWIMPSの「セツナレンサ」を聞いててふっと思いついたネタ。まぁ小説ってーより短編だなこりゃ(笑)
ちなみに書いてるうちにどんどん「セツナレンサ」とは関係なくなってきたのは…まぁ…笑うしかねぇな〓

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