We are HEROS!?

□〜ヒーローはいつでも無鉄砲〜
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――数十時間経った。
もう夜更けである。イギリスはイライラし始めていた。うろうろ動き回ったり、ジーッとパソコンを見つめたりしている。
『よほど心配なんでしょうね…無理はないですけど。』
何せ、イギリスにとってアメリカは弟のようなものだし、ましてやイギリスの性格上心配しないわけはないのだ。
「イギリスさん、落ち着いてください。」
そう言おうとした時だった。
ビーッビーッとパソコンのメール受信の音が鳴り響く。
その音を聞くな否やイギリスは
「アメリカだなっ!」
と言い、目にも留まらぬ早さで家を出ていってしまった。
「あ、イギリスさん!」
と日本が声をかけた頃にはイギリスが乱暴に戸を閉めた後だった。
「まだ連絡の内容も見ていませんのに…」
ため息をつきメールを開いた日本は「あら?」と声を出した。メールの内容は、アメリカ宛に来た仕事だったのだ。


その時アメリカは戦いの真っ最中で、とても連絡をする余裕などなかった。
蹴っても撃っても吹き飛ばしても、後から後から湧いてくる敵にうんざりしかかっていた。
「せめて、も少し強かったら張り合いがあるんだけどな…」
ぐずぐずしているとイギリスにどやされてしまう。強行突破しかないかと思った瞬間、警告音が鳴り響いた。
『侵入者がもう一人だ!半分は広間に急げ!』
「…まさか…イギリス…?」
一瞬気を取られたその時、アメリカは敵に背後を取られた。
「しまった!」
と思った頃には視界が揺れる。
『…スタンガン……』
頭の中で自分をしとめたであろうモノの名前をつぶやいた後、アメリカの意識はとぎれた。


ぱち、と目を開けた頃には既に荷物を取り上げられ腕を前に縛られた後だった。あたりは薄暗く目の前には鉄格子が見える。牢屋の中らしい。
どうやらゴーグルと帽子は取られていないらしく、自分がアメリカだとは気づかれていないらしい。ほっとしていると檻の外でしゃべり声が聞こえた。

「こいつぁ厄介ですよ、坊ちゃん。何しにきたかは分かりませんが中々腕が立つところを見ると…」
「もう一人の侵入者はこいつの仲間ですかね。」
下っ端のような奴らの真ん中に、ひときわ豪華な服を身に纏った青年がこちらを見ている。どうやらこの青年が例の主犯らしい。
「まぁ厄介だろうが腕がたとうがこうして捕まったんだからそれだけの奴だろ。侵入者との関係性ならコイツに口を割らせりゃいいだけだ」
見下すような言い方の上更に鼻で笑われ、アメリカは冷たい目でにらみ返した。
「どーせ盗みか何かが目的だったんだろ?全く近頃の奴らはろくな事考えやしねーな…この屋敷に入ってきた時点でとんだバカ野郎だけどな。」
完全に自分の事は棚に上げてしゃべっている。こんな奴が自分(自国)の国民だと思うとショックでならない。はぁあとため息をついたアメリカに犯人は
「ま、そこでせいぜい仲間が助けに来るのを待ってるんだな、Sneak thief。」
と笑いを含んだ声でいい残して牢屋を出て行った。
ギイィ、ガシャンと牢の扉が閉められる。
人が去っていく音を聞いたアメリカはふーっと息を吐き、縛られた腕で器用に前のチャックを開け、腹に巻いてあったさらしをブチブチと引きちぎるとカランカラン、と音を立てさらしの中から薄型の折りたたみナイフが落ちた。日本が巻く際にさらしの間に挟んでおいていたのだ。
「日本のSARASHIってキツいだけじゃなく便利だなぁ…流石日本、合理的だよ。」
サラシから取り出したナイフで腕の縄を上手く切りながらぼんやり考える。
自由になった腕で足の方の縄も解き、チャックを上げ、ようやく解放された。後は牢から出るだけ…と思ったが、元々錆び付いてガタが来ていた牢の扉は少々強く蹴り飛ばすだけで容易にドアが吹っ飛んだ。牢から出て牢の部屋を出てみると、細い通路がずっと続いている。よく見てみると、曲がり角には監視がいた。
少し考えた後、アメリカはナイフを正面の壁めがけて力一杯なげた。ガッとナイフが壁に刺さりそれを見た監視が驚き「誰だ!」と振り向く時にはアメリカの跳び蹴りが監視の顔面にヒットしていた。
「これ借りてくよ。さすがに丸腰じゃ俺もキツいし。」
落ちている銃を拾いながら話しかけたが、気絶した監視が応答するわけもなかった。
「…さ、急がなきゃね。きっとイギリスが家で心配してる頃だろうし。まずは俺の荷物を取り返しにいこう。」
奪った銃を片手にアメリカは細い道を走り始めた。


――そのころイギリスは大広間に集まった数百の敵に囲まれていた。
「チッ…しくったな。囲まれたか」
アメリカを助けようとわざわざ出向いたのに、これでは二の舞になってしまうではないか。そもそもアイツがヘマしなければ…などとぶつぶつ文句を言っている間にも敵はジリジリとイギリスに迫っていた。
「…今頃アイツ、死んでるんじゃねぇだろうな…」
目の前の多勢な敵を前に、銃を構えながらぽつりと呟いたその時。
バラララ、という銃声が鳴り響き、バタバタと人が倒れていく。
「誰が、死んでるかもだって?」
威勢良く響く声にハッと吹き抜けになっている天井の方を見上げると、マシンガンを両手に持ったアメリカが上の階から顔を出していた。
「HEROが死ぬなんて、絶対あり得ないんだぞ。そんな事も知らないのかい?」
「…こんの地獄耳が…」
イギリスは呆れながらもどこかほっとした感情を持ちながら苦笑した。

「なめるんじゃねぇぞ、クソ野郎共!」
ガンガンと声が響き、敵の銃口は一気にアメリカに向けられた。アメリカは顔色一つ変えず鞄から何かを取り出し大広間の中心に投げ込んだ。
――あれは―――
その投げ込まれたモノに不吉な予感を感じ、イギリスはサッと頭を下げた。

バン


と銃声が鳴ったと同時にパァンと何かの破裂音が鳴り響き、イギリスと敵の頭上に降り注ぐ。

「うわぁ!?」「何だこりゃ!?!」と困惑した声が発せられる前に、マシンガンの玉がけたたましい音と共に再び敵の頭上から襲いかかった。


――数分経っただろうか。気がつけば殆どの敵が倒れ呻いている。
「アメリカ、お前…」
柱に縄を括り、それをつたって一階に降りてきたアメリカは、話しかけてきたイギリスを見てニッと笑った。
「あれは取り上げられていた俺の鞄に入ってたコーラさ。随分と振らさっちゃってたし、もぅ飲めないからね。あと武器はちょうど武器庫があったから…」
「んなこと聞いてんじゃねぇよ、馬鹿!」
一喝をいれられて、アメリカはきょとんとした顔をする。
「だから無茶だっつったんだ!俺と日本がどれだけ心配したと思ってんだよ!」
「へぇ、心配してくれてたんだ。」
わざとらしくによによと笑うアメリカに、イギリスはハッとして目を逸らした。
「あ、い、いや別に!俺がお前を心配してたんじゃなくてだな、日本があまりにもお前を心配するもんだから俺は仕方なく…」
「はいはい、分かったよ。」
心配性なイギリスの事である。待機に耐えきれず家を飛び出してきたという事は何も言わなくても十分分かった。
「君を仲間にして、本当に良かったよ。」
くすくすと笑いながら話すアメリカを見ながら今度はイギリスがきょとんとした。
「あぁ?なんだいきなり。」
「別に!ほら、日本が心配してるんだろ?さっさと仕事を片づけて帰るぞ!」
「お、おぃ待て!」
バサッとジャケットを翻し走り出したアメリカの後をイギリスは急いで追った。

「こちらイギリス!アメリカと無事合流したぞ!」
『それは良かったです。GPS機能で私が誘導しますので、急いで玄関に向かってください。』
「了解!おぃ、アメ…」
ふと話しかけようと振り向くと、背中に星を背負った赤い姿が見あたらない。
「…あんにゃろ…まさか…」
イヤな予感がイギリスの頭を過ぎった、その瞬間。
爆音と共に横に枝分かれしていた道から瓦礫が飛び、煙がもうもうと流れてきた。
「やっぱりか!あのバカ!」
イギリスは両手で頭を抱えた。全く、あいつはどうしてあんなに考えなしなんだ!誰があんな風に育てたんだ!……あ、俺か!
『イギリスさん、どうしました?』
「アメリカのバカ野郎が敵陣に突っ込んで行きやがったんだよ!」
『何ですって!?』
「日本、なるべく早くこっちに来れないか?」
『…善処します。』
「よし、証拠を押さえるのはお前に頼む。俺はアメリカの援護に行くからな!」
『了解しました。』
無線を切り、イギリスはチッと舌打ちをして走り出して踵を返し、走り出した。決して、アメリカに対して舌打ちをした訳ではない。
「…悪かったな。」
イギリスはぽつりと呟き、爆発があった部屋へと急いだ。

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