白銀色の翼を持つ鳥が、飛んだ。

薄青に身を浸す空を目指して。その先に求める未来があると信じて。その身の内をたぎる炎の思うままに、彼らは飛んだ。その身に降りかかる、残酷な現実など振り切って。


彼らは、青い空を、飛んだ。




白銀(しろがね)のそら





仄暗い闇に堕ちた、冷たい土が露わになった地面と冷たい壁と鉄格子に囲まれる、小さな部屋。
その隅に膝を抱えて座り込む、白銀色に染まった長い髪を持つ、幼い少女。彼女の細い両足首は鎖で繋がれ、その鎖の先には大きな錘が付けられている。


少女は微動だにしないで、静寂に満たされたその空間に腰を据えていた。

するとどこからか、小さな足音が反響して聞こえ始める。その途端に、少女が顔を上げた。
いつから伸ばしたままなのか分からない、顔を覆う長い前髪から、彼女は鉄格子の向こう側を見据える。


聞こえていた足音が随分近くなると、不意にその音は途絶えた。
少女は微動だにしないまま、じっと鉄格子の向こう側を見つめた。鋭い眼差しが、闇を切り裂く。

すると暗闇に身を染めた何者かが、少女に向かって声を発した。



「あんたは、明日売られる」



いまだ声変りしていない少年の声が、その場に響く。



「いい人間に売られることを、精々祈っときな」



少女は口を噤んでいる。
闇に姿を隠したままの幼い少年が、足を進める音がして、彼は不意に闇から姿を現した。
少女は鉄格子越しに、幼い少年を見つめる。まるで闇と同化しているような、漆黒の髪を持つ少年が、光りの無い眼で少女を見ていた。
少女は乾いた口を、そっと開く。



「あなたは、人間じゃないみたいだ」



冷淡にそう言った少女を見て、少年は哀しげに目じりを下げた。
何も瞳に映してはいない幼い少年が、静かに言った。



「この鉄格子が、人間と人間じゃないものの境界線」



少女は鋭い眼差しで、少年を見据える。少年は少女を真っ直ぐに指さした。



「あんたは人間(獲物)。俺はばけもの(狩人)」



彼はさみしそうに笑って、腕を下ろした。



「もう、捕まるなよ」



少年はそう告げたのと同時に踵を返し、再び闇へと消えて行く。
少女はそれ以来、彼と顔を合わせることはなく、この鉄格子の中から足を踏みだした。






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おりじなるの序章みたいなやつですね
24には別のバージョンのが載ってます


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