小説

□byらむ様 '11.07.19
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「おい、聞こえてるか?」

突然破られた沈黙。

誰?

聞こうとして息を吸う。むせる。

長らく口なんてきいていなかったせい。

数秒むせて落ち着くと、さっきの声が
「聞こえてるようだな」と。

「誰?」

「ただのポリゴンさ。まあ俺の自己紹介なんぞいらんだろ」


ポリゴンと聞いて納得。

どうりでボックスの中の自分と話せるわけだ。


「俺は今とあるトレーナの手伝いをしている。ポケモン達をボックスから解放するのさ」

「そんなことが可能なの?」

「可能なんだ。もうすでに何百匹ものポケモンがその人のおかげで解放されてる」

「犯罪」

「そう思うならここに残るか?俺はそれを聞きにきたのさ」


残るか。残らないか。

自分は――


強い力に引っ張られ気を失う。

目が覚めた時、自分は見知らぬ森にいた。

周りには沢山の、様々な種類のポケモン達。

彼らが思い思いに叫ぶのは

外にでれたことへの喜び。

家族に再び会えることへの喜び。

自由を得た喜び。

喜び。



息を吸う。

肺いっぱいに久しぶりの外の空気が広がり、涙がこぼれた。

自分にはこの自由を喜ぶことなんてできない。

自分が望んていたのはこんなものじゃない。

こんなものじゃない!

自分が望んでいたのは…自分が望んでいたのは……



どうせいくら待ったところで彼はこないさ。


脳味噌のどこかがそう言った。



END

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