蒼紅 DS小説

□オトンとオカンの喧嘩
3ページ/4ページ

酒場で身内が暴れてるとしらせを受け、それぞれの身内は駆けつけていた。
問題の酒場に到着すると、身内の一人が戸に手をかけた。
そしてもう一つの手も同時に掛かった。

「政宗殿!?」
「幸村!?」

二人の声が重なる。
お互い驚くと、そしてなんとなく事の次第を察知して、二人は店に入った。
店の中はめちゃくちゃに壊され、渋い顔をした女将が呆れて立っていた。
床に二人の男が転がっていて、お互い幾度も殴り合った跡が伺えた。

「佐助!」

幸村が駆け寄ると、佐助は薄れていく意識の中で

「旦那ぁ…」

と情けない声を出す。

「小十郎!」

ボッコボコに腫れた顔の小十郎を見て、心配よりやれやれと言った感じだった。

「政宗様申し訳ございませ…」

ガクッと意識が飛んだ。
ひっくり返った大の大人達を見て、幸村は心配そうにしていた。
「女将世話かけたな。店の修理費は後で請求してくれ。悪いけど外の荷台借りるぜ」

そう言って小十郎を抱え上げた。
後に来た従者に小十郎を託し、政宗は幸村の側に寄った。

「政宗殿ォ、某…何が何だか…佐助がこんな風になるなんて何かあったのでござるか…」
「…」
「佐助がこんなこといつもはしないでござるよ…」

佐助に代わっての代弁なのか、幸村は神妙な面持ちでいて、

「迷惑かけて申し訳ござらぬ」

そう言って佐助を抱え上げようとしたが、政宗が制した。
従者を呼ぶと、

「あー二人とも俺の屋敷に運んでくれ」
「政宗殿!?佐助は某が」
「ここからなら俺の屋敷が近いからな。…幸村お前も来いよ」
「え…でも、某は政宗殿の屋敷には…」

自分の失敗のせいで政宗に危害が及んで謹慎の身であった為、幸村は驚きを見せた後、目を細めた。
そんな幸村のか細い訴えを覆すように、政宗は幸村の手を強引に引き寄せた。

「いいから、来るんだよ」
「あ…」

有無を言わせず、強く握った手は、幸村を安心させた。
こう言って何度力強く自分を引っ張ってくれたのは何度目か…
そう思いながら幸村もつないだ手を握りしめた。


今日の事は大体何が原因かわかった。幸村…お前と離れてからもう駄目かと思ったことがあったけど、何度も会いたくなって…
どんどん離れていくことに不安で…でも離れていても心を強く持っていれば大丈夫なんだってな…

もう、俺はこの手は離さない…どんな場所でも、どんな困難が起きようとも…



政宗は久しぶりに感じた幸村の手の温もり、感触を感じながら。


心の中で そう 強く 決意した。




幸村が屋敷に戻るのももうすぐ…。






次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ