蒼紅 DS小説

□佐助の苦悩編 (後)
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翌朝、幸村は鍛錬に精を出していた。
佐助はやりきれない思いで木の上からそれを覗いていた。

あんなに思いつめて(←佐助主観)槍を振るっている…。あの男にきっといいようにそそのかされているに
違いないのに、気づいてくれよ〜旦那ぁ。

はぁぁ…なんで男なんかに…

俺様…女しか駄目だけど…旦那だったら…


「佐助何をするでござるか!?」
「旦那ぁ、あんな男より俺様の方が気持よくさせてやるよ!!!」
「駄目でござるよ!佐助佐助ーーー!!!そこはぁぁ!あー…」


脳内で淫らになった幸村の姿に佐助はイメージ妄想して…
全然イケル、イケル!旦那だったら受け入れられる。今は気持ちを奪って、その後に可愛いお嫁さんを探してきて
子供を(ry
佐助計画が完了したところで、
「…助、佐助」
と声が聞こえて、目を開けると、先ほどイメージした自分に組み敷かれ、突然のことに戸惑い困惑してる幸村の顔が目の前にあった。
「???」
ああ…まだ俺様妄想して…ん?でもなんか柔らかい感触が…あったかいし…
……って!!!俺様本当に旦那を押し倒してるーーー!!!
下から見上げる幸村の顔は不安げで、しばらく気まずい沈黙が続いた。
俺様どこまでやったんだ?…とりあえず旦那は服を着てるし…
佐助の頭はぐるんぐるんした。
「あ…あの旦那俺様何かした?」
「…」
「待って!」
幸村はきょとんとして何かを発しようとしたが、佐助は慌てて遮った。

はぁぁぁ!!!駄目だぁ!!!俺様が何かしたかなんて、旦那の口から聞きたくない!

「…佐助が落ちてきた岩から救ってくれたでござるよ」
「へ…?」
よく見ると周りに細かくなった岩の塊が散乱している。

あああ良かったー!!!俺様あやうく間違いを犯すところだった。無意識の俺様GJ!

幸村は立ち上がって鍛錬の続きをしようとして、佐助はほっと胸を撫で下ろすしたが、
すぐに幸村の肩を掴んだ。
「佐助なんだ?」
「旦那さぁ」
佐助の普段のおちゃらけは消え、その瞳は真剣だった。
「あの独眼竜が好きなの?」
今まで一回もその話もしたことはないので、幸村の瞳に戸惑いの色が浮かんだ。
一呼吸置いた後、
「……好きでござるが…」
面と向かって佐助に聞かれたのは恥ずかしかった。幸村は顔が上気するのがわかった。
「男同士でおかしいんじゃないの?」
「……」
「……」
お互い沈黙すると、最初に幸村が小さな声で切り出した。
「…別に…いいではないか…」
ぷいっと顔を背け、佐助から顔を逸らした。
自信なげな幸村の態度や、拗ねる感じが佐助の神経を苛立たせた。
「は!何それ…全然真剣じゃないよ、旦那。なんで隠すの?後ろめたいんだろ?
そんな付き合いやめちまえよ!」
佐助は吐き捨てるように言うと、黙ってる幸村を見下ろす目で見た。
「どんなに惚れた腫れたなんて言ったってさぁ、旦那の恋愛は所詮ままごとなんだよ!…」
言葉は止まらなかった。
幸村の顔が怯え、悲しみ、怒りに変わるのは時間が掛からなかった。
ぷるぷる震わせる肩が止まり、こぶしをぎゅっと握っている幸村の宙を切り、
佐助の顔を殴る…ことはなかった。
咄嗟に身構えてた佐助は拍子抜けした。
見ると、幸村は上げた腕を力なく降ろした。
「佐助だけにはわかって貰えると思ったのに…」
寂しそうに俯いたその姿が、無意識の内に佐助は幸村の肩を引き寄せさせた。
その後は覚えてない。
ただ、唇に微かに感じた暖かさは何なのかわかるまでしばらくかかった。
最後に覚えてたのは、走り去る幸村の小さな姿だけが脳裏を掠めただけだった。



その夜、旦那は帰って来なかった。



寝所に入っても佐助は寝付けなかった。
昼間のことを思い出し、自分の言った言葉の数々に後悔した。

あんなこというつもりはなかったのに…。

でも真っ直ぐな旦那には直球でいかないと駄目なんだよ!

佐助の頭の中でぐるんぐるん色んな思考が交差した。
あ〜でもないこ〜でもないと考えて、絶えず玄関を覗いたり、布団に入っても悶々もやもや…。
寝れないので起き上がり頭を抱える。
「はぁ〜あれってさぁ…たぶんだけど、旦那とさぁしちゃったってことだよね〜」
誰に聞いてるのかは定かではないが、頭の中でもやもやと認めたくない呟きをすると、
また佐助は苦悩した。
「だから…帰って来ないんだよね…」
自分の行為がうろ覚えで、ますます頭が混乱してくる。
「あ〜なんか疲れちゃった」
佐助は溜息をつくと、長い時間かけた答えを胸に刻んだ。
「旦那は真っ直ぐなんだよね。小さい頃から正義感強くて熱血で…いつかもいじめっ子を
退治してボロボロになって帰ってきたんだよね。その後親から苦情が来たっけ…」
佐助はくすりと笑って、昔の記憶を思い出していた。
昔の幸村と今の幸村の姿が頭を駆け抜け、そして未来の幸村の子供達の姿が現れ始め、
ひと時の幸せの夢を見ながら、佐助は眠りについた…。




朝方、ガタガタする音に佐助は目覚めた。
それは小さな音だったがすぐにわかった。
台所に向かうと、人がいた気配は感じ、戸が開いて風でパタパタ揺れていた。
佐助はふぅっと溜息をついて、その戸から外に出た。

「旦那何してんの?」
背後から声をかけられて、幸村は口に入れた団子を急いで飲み込んだ。
「ゲホゲホ…!」
慌てて食べたので喉に詰まった幸村の後ろ姿を見て佐助はほっと息を吐いた。
「もう…!そんなコソコソ食べる必要ないでしょ。奥州じゃないんだから」
「……」
一瞬気まずい間があったが…
「お腹空いてるんでしょ、旦那♪」
明るく振る舞う佐助に、幸村はくるっと振り返って見つめた。その途端派手にお腹の音がなった。
「……」
かぁっと赤くなる幸村に佐助は声をかける。
「これから旦那の好きな物作るよ♪」
「あ…佐助…その…」
俯いてもじもじしてる幸村を尻目に、佐助は空気を読まない人を演じた。
「どうしたの〜いつもの旦那らしくないよ〜」
「……昨日は……」
「あ、そうそう、旦那さぁ、料理習わない?」
「え…?」
不意な佐助の言葉に幸村は不意を突かれて驚愕の顔を見せた。
「ほらさ…今回旦那失敗しちゃったわけじゃん。だから竜の旦那に元気になってもらうように、
美味しい物を作ればいいじゃん♪じゃん♪」
おどけて言う佐助に
「教えて欲しいでござる!」
幸村はぱぁっと顔を輝かせて、朝の光が注ぎこみその光が、最高級のスマイルを映し出した。
その笑顔を佐助は目を細めて眩しそうにそして優しく見つめた。



ふざけんなよな〜はぁ、まっ〜たくあんないい笑顔見せられたら認めなきゃならないじゃないか。






もし、この先旦那が不幸になるようなことがあれば、俺様は、独眼竜あんたを許さないから、覚悟しておけよ!

その時は俺様が旦那の事を奪うからな!




佐助は幸村の肩を軽く叩いて、二人は台所に向かった。それはお互い信頼し合う主従関係の姿だった。







END






次におまけの漫画です^^
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