蒼紅 DS小説

□佐助の苦悩編 (前)
1ページ/1ページ

奥州に行っていた旦那が帰ってきた。ひどく憔悴した様子だったが、どうしてかはわかっていた。


旦那はしょぼんとしていたがどっちにしても帰ってきてくれて俺様嬉しいよ。



旦那と竜の旦那が付き合ってることは前から知っていた。旦那が奥州に行くって言った時、右目の旦那に事の詳細を聞いた。



ちょっと前から右目の旦那と一時的に結託してあの二人を別れさせる計画を練っていた。
先日の「幸村無理に看病させる」計画は功を制したが…料理出来ない旦那に、料理を作らせ、
竜の旦那に呆れさせるという…まさか食中毒を起こすとは計算外だった(旦那何作ったの?)
命を落としかけて、さすがに右目の旦那が黙っていなかったけど…ケ!どうせだったらそのまま昇天してくれても良かったのにな!


あああ、駄目だぁ!!!旦那の悲しむ顔なんてみたくないよ〜〜!!!

はぁ…なんであの独眼竜と…


あの独眼竜はいけすかない。理由?チャラい感じだし、変な言葉を発するし、傍若無人で
天上天下唯我独尊ぶって、ブツブツ…(その後も続く)つまりが気に入らないってことだ!
あの二人が好きあう仲なんて思ってなかったし、旦那の口から聞いてないし…。なんで言ってくれないのかと俺様ちょっと落ち込んだ。……どっちにしても許す気なんてさらさらないけどね!






旦那には可愛いお嫁さんを貰って、旦那そっくりの子供をたくさん産んで貰って、そしてその子が俺様に
「佐助と将来結婚する〜」なんて言ってくれるのを夢見てたのに!
なのにあの男どこまで俺様の計画を邪魔するんだ!
終わりだ、もう終わりだ。俺様は何を希望を持って生きていけばいいんだ!


でも、あれだよね付き合ってるってことは、もちろんもう深い関係ってことだよね…!

佐助は今更のようにはっとなった。

あんなことやこんなことやそんなことや…あわわわ…

佐助は脳内でしばらく考えてみる。

旦那はあの時はどんな顔をしているんだろうか…

「あ〜駄目でござるよ!そんなこと…!」
「いいだろ、別に減るもんじゃねぇし…」
あのいけすかない男の顔が浮かぶ。

想像したくない!
わああ、もう終わりだあああーーー!!!

佐助はうなだれて、がくっと膝をついた。



「佐助!佐助ェェーーー!」
ふと聞きなれた声が聞こえた。
顔をあげると自分を心配そうに見つめる幸村の顔が覗きこんでいた。
「あ…旦那」
「どうしたでござるか?顔色が悪いでござるよ」
「あ…いや…」
佐助はすくっと立ち上がった。
「大丈夫。なんでもないよ旦那。それよりもう陽がくれてきたから夕餉の支度をするよ」
「ご飯か…」
「どうしたの旦那♪旦那の好きな物作るよ」
幸村の顔を見て安心した佐助はいつもの明るさを取り戻し、少し浮かない
幸村の顔はすぐに記憶に中に消え去っていた…。


「あれ、旦那?もう食べないの?」
昼餉は幸村の好きな物ばかり揃っていた。でも、いつもはがっついて食べているのに今日に限っては
お茶碗一杯とおかずも残していた。
「体の調子でも悪いの?」
「そうではないが…」
少し俯き加減の幸村を見て佐助は思惑した。
旦那…独眼竜のことを考えているのか?さっきから溜息ばかりついてる…
幸村は食べ終わった茶椀を置くと…はぁっと溜息をついた。

政宗殿に団子や甘味を控えるように言われたでござるよ。また太ってしまっては駄目でござる…。大好きな
佐助のご飯も我慢せねばならぬ…

旦那ぁ…

団子食べたい…

佐助と幸村は二人同時に深いため息をついた。





夜、佐助は布団に入っても寝付けなかった。
食事時の幸村の悲愴な様子が頭から離れなかった。
あんなに俺様の旦那(未来の幸村の子供達を含む)を悩ませるなんて…くそ!
佐助はやり場のない怒りに震えていた。
頭の中が悶々として、幸村の笑ってる顔や鍛錬してる真剣な顔が浮かんだ後、独眼のあの男のya-ha!!!
してる顔が浮かんで、佐助はむかむかと苛立った。

あんな男のどこがいいんだ…はっ!もしかして旦那脅されてるんじゃ!?

「へへ、幸村あのことバラすぞ」
「やめてくだされ政宗殿!言わないでくだされ!」
「幸村おとなしくしろよ。俺に従えばいいんだ」

佐助の頭の中で幸村は脅されて縛られてる姿でいっぱいになった。

がばっと布団から跳ね起き、怒りに震える手で小太刀を握りしめ、
「今からあいつの寝首(弱ってる今がチャンス)掻っ切ってきてやる!」
かーっと頭がに血が昇り脱兎の如く屋敷を出ようとしたが、廊下で幸村の姿が目に入り佐助は我に返り、
見つからないように身を潜めた。
幸村は物入れを中の何かをごぞごそやっていた。それが何かわからなかったが、
その後に幸村の嗚咽が聞こえてきた。
旦那が泣いている…後ろ姿の幸村は肩を振るわせて、グスグス、えんえん泣いていた。
その姿を見たら、さっきの考えが打ち砕かれた。
佐助はなんとも言えず、しばらく見つめていたが、複雑な表情でその場を立ち去った。胸が切なさで満たされた。

佐助が去った後、幸村は隠していた団子を口に運んでいた。
「ああ…佐助のご飯まで我慢して食べる団子は格別に美味しいでござるよ…グス」
と呟いていた…。



後編に続く…。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ