蒼紅 DS小説

□看病編 そのA
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やっとこの手の中に宝物が入った。ずっと欲しくて届かなくて、諦めかけて、
でもお前のそのキラキラ輝く目が眩しくて、どうしてもその太陽を掴みたくなったんだ。

掴んだ先はとても暖かくて、心の孤独が消えていった。

俺の大切な宝物。

これからもずっと離したくない…。

永遠に…。






「…殿ォ…政宗殿ォ…」
まどろみの中で遠くから声が聞こえた。心地よく安心する声。
目を開けると心配する幸村の顔が映った。
ぼぉっとする頭を振って体を起こした。、
「…なんか夢見てた気が…」
「大丈夫でござるか?」
「ああ…大丈夫だ」
嫌な夢を見た…。俺のこの手から幸村がすり抜けて行った。空虚を掴んだ先は絶望しかなかった。
しかし夢だ。そんな筈はあるはずがない。
心配そうに見つめる幸村の顔を見て政宗は安堵して、頭を撫でた後抱きよせた。
「政宗殿…?」
「しばらくこうしてて…くれ」
髪を撫でながら、指の先から温もりが伝わってくる。
幸村は、政宗がどんな夢を見たのか気になったが、その考えはすぐに消えていった…。



「あれ、なんか屋敷が静かだな…?」
「みんないないでござるよ」
「ん…?小十郎もか…?」
昼まで寝てたせいか記憶が…そういえば昨日なんか言ってたような…?
「みんな…いない…。そうか…何しようか…何…ブツブツ…」
政宗が悶々もやもや考えてると、幸村はかっぽう着に着替えた。
「あれか…いや…やはりまだ明るいしな…」
「じゃあ、政宗殿某は昼餉の支度をするでござる」
「ん…?ああっ…って!?お前が!?」
「片倉殿に頼まれたでござる。まかせるでござる!えっへん!」
自信満々に胸を張る幸村に政宗は不安を覚えた。
しかしこの満面の笑みを壊すことは出来ない。
「百歩譲ってわかった…食べるけど…何作るんだ?」
「天ぷらでござる!」
「(やめろ〜〜わああ゚。・ヾ(。>д<。)ノ・。゚)」
颯爽と台所に向かう幸村を全力で止めようとした政宗であったが、まだ完治していない傷の痛みに
耐えかねその場にうずくまった。
「うう…この体が呪わしい…;;」


政宗が部屋で這いつくばってる頃、台所からガチャンガチャンと皿が割れる音がした。
(´●д;`)ブワワ

その時ふと昨晩の会話を思い出す。

「政宗様、真田はしばらく里に帰したらいかがですか?怪我が治りませんぞ!」
「いいんだ、気合いで治す!」
「あなたが叱らないと誰も叱れないのですぞ!」
「うるせえ!俺がいいって言ってるんだからいいんだ!」
「……そうですか、そこまで言うのでしたら身をもって体験なさるといい…」


「あの不敵な小十郎の笑い…まさか…」
はっと口元を押さえて血の気が引いていった。
そして、部屋に見慣れないモニターが置いてあった。
「こんなのあったか?」
モニターのボタンを押してみると…そこには幸村の姿が映し出された。
台所にカメラが仕掛けられてるらしい。
そこに映ったものは…









なんとか無事に(?)天ぷらが出来上がり、幸村はいそいそと戻ってきた。
「政宗殿ォォ出来たでござるよ!」
衝撃的な映像で満身創痍の政宗の前に愛すべき人が作った料理が置かれた。
見た目はぐちゃっとして油が滴り、大きく切られた野菜、丸ごとの魚が粉に近い状態で揚がられてた。
Σ(||゚Д゚)ヒィ〜!!
「早く食べてくだされ」
ニッコニコと満面の笑みとキラキラ輝かせる瞳に逆らえるわけでもなく、そっと箸を取り食べた。
一口食べて吐き出しそうになったが堪えた。
「味はどうでござるか?某初めて作ったにしては自信があるでござるよ!」
「……
 …こんな美味しい物食べたことない…(棒読み)」
「本当でござるか!嬉しいでござる!ささ、全部食べてくだされ!」

政宗は言葉も出ず、天ぷらを全部平らげた…。



翌日政宗は食中毒になり、しばらくの面会謝絶の余技なくされた。



幸村は甲斐に帰された。




「政宗殿ォォォ心配でござるゥゥゥ。゚(゚´Д`゚)゚。」




お…おしまい…

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