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□ためらうことなく
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暫く店内に飾られている彼女の作品を眺め歩いていると、奥からクッキーとお茶の入ったトレーを持って彼女が出て来た。
「こちらにどうぞ」
彼女が案内してくれたのは、部屋の隅にある一角。
小さな白いテーブルに椅子が二つだけ。
側の出窓には、彼女お手製のカーテンとクマのぬいぐるみが置かれている。
「これは昨夜作った物なの」
そういって、彼女は色鮮やかなパッチワークのテーブルクロスを敷いた。
白地に赤やピンク系をメインとした花柄の、ドが付く程に乙女チックな代物だったが、その出来は素晴らしい。
「流石、723ブランドだな」
テーブルクロスを撫でる様に触りながら、赤い人物は思わず呟いた。
「ブランドなんて…大したものじゃないわ。
これはただの趣味。
暇潰しみたいなものだもの。
さぁ、どうぞ」
少女に座る様促され、赤い人物は椅子に腰を掛けた。
それを見届けると、少女も椅子に座る。
「自己紹介が遅くなってごめんなさい。
私は夏美。
あたなは?」
「俺はギロロだ。
ハンター業をしている」
「ハンターさん?
ってことは狩りをする人よね?」
「そうだ」
夏美は少し驚いてギロロをまじまじと眺める。
「意外だわ。
だってギロロって見た目が可愛いじゃない?
ちっちゃいし」
「かわっ!?
ち、小さいと言うな!!
これでも俺は一流のハンターなのだぞ!!」
「そうなの?ごめんなさい。
別にからかった訳じゃないのよ?
本当に意外だっただけ」
夏美はクスクスと笑ってクッキーを差し出した。
「お詫びにどうぞ」
「…頂こう」
ギロロが篭からクッキーを一つ掴んで口に放った。
その様子を嬉しそうに眺め、ギロロが飲み込んだのを確認すると、夏美はすかさず口を開く。
「どう?」
「旨い。
俺には少し甘いが、嫌いな味ではないな」
「本当!?
良かったぁ…沢山あるから遠慮せずに食べてね」
「あ、あぁ…」
「ふふ、紅茶もどうぞ。
あ、コーヒーとかの方が良かったかしら?」
「いや、これでいい」
恥ずかしそうに伏し目がちになりながら、ギロロはカップを手に取った。
ハーブの良い香りがする紅茶は、癖がなく、とても飲みやすい。
クッキーの甘みには丁度良いものだった。
「これも旨いな。
クッキーにピッタリだ」
「ありがと、嬉しいわ♪」
べっつにぃ〜?→