SS
□居心地の良い空間
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「にしても、安らかな寝顔でありますなぁ〜」
繋いだ手は、俺の身体に隠れて隊長からは見えない。
隊長が覗き込む様に先輩の顔をまじまじ眺めた。
その表情に一瞬ドキリとする。
もちろん隊長にときめいたとか、そんな乙女チックなコトじゃなく。
隊長の、愛しい者を見る様なその眼差しは、まるで…。
途端、隊長の表情が一変した。
「ゲロゲロリ。
イタズラしてやろっかなぁ〜?」
ウキウキと言う隊長に、一抹の不安を抱きながらも、あくまでポーカーフェイスは崩さない。
不安なんざ、俺様らしくもねぇしな。
「止めとけよ、隊長。
万が一起こしちまったら、こんな狭いバスの中で大暴れされんぜ?」
「ゲロー…そうしたら、夏美殿に怒られるでありますなぁ…」
まだ何もしちゃいないのに、隊長は恐る恐るバスの前方に顔を向けた。
日向夏美は隣に座る東谷小雪と楽しげに話しをしてる。
それを確認すると、隊長はホッと息を吐いた。
「ただでさえ、大人にされてあんま機嫌良くねぇんだ。
後は帰るだけなんだし、大人しくしてな」
「折角のチャンスなのにぃ〜!
…しょうがないでありますな」
「軍曹さぁ〜ん?」
「今行くであります!」
タママに呼ばれた隊長は、前方の席に戻って行く。
乗車時に乗ってた他の客はみんな降りちまって、現在俺達以外の客はいない。
そのお馴染み面子も全員前方に固まって座ってるから、ここには俺達二人だけ。