アニメ補完計画

□夏美 ロミオとジュリエット?
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次第に照明が暗くなり、幕が上がっていく。
途端、ドロロの表情が固まった。

「…え?ギ、ギロロ君?」

ステージに現れたのは王子風の夏美に、ドレスを纏ったギロロ。
てっきり男性役だと思っていたドロロは、小雪に目を向ける。

「これならば、小雪殿が演じた方が良かったのでは…」

純粋に、心の奥底から思った。
だが、小雪は小さく首を振り、笑顔でステージの二人を指差す。

「そんなことないよ。見て、ドロロ。
 二人共すっごく楽しそう」
「…そうでござるが…あ、お客さんも皆楽しそうでござる」
「どっちがどっちを演じるかなんて関係ないんだよ。
 どっちを演じたって、二人の世界になっちゃうんだから」

小雪は嬉しそうにステージを見ている。
ふと、もしあそこにいるのが自分だとしたら、隣で演じてくれるのは誰なのだろうと思った。

「でも…やはりドレスは小雪殿が着た方が似合っていたでござるな」
「え?そ、そうかな?」

笑顔でサラリと言うドロロ。
もちろんそれは本心だったが、夏美と劇に出られなかった小雪を励ますものでもあった。
それは小雪にも分かっていて、ドロロの優しさが嬉しく思うと同時に、心に浮かんでくる言葉。

「じ、じゃぁ、もしも私がドレスを着てステージに立てたとしたら…相手役はドロロがしてくれる?」
「せっ、拙者でござるか!?」

小雪の予想外の返答に、ドロロは驚いた。
絶対に夏美と舞台に立ちたいものだと思っていたからだ。
けれど、もし…もしも本当に彼女がそれを望んでくれるのなら。

「よ、喜んでやらせて頂くでござるよ」

小雪は嬉しそうに満面の笑顔を向ける。
先程自分が思った“隣の相手”。
それは、いつも一緒にいてくれる人。
優しくて、頼りになる…誰よりもかけがえのない大事な人。
小雪の中で、何か暖かなものが小さく芽生えた気がした。
今までとは違うこの感じ。
その芽はまだまだ小さいけれど、小雪にとっては大きな変化。

「嬉しい〜!
 約束だよ、ドロロ♪」

小雪の思いに答える様に、ドロロも笑顔で頷いた。
ほのぼのとした暖かな空気が流れる。
この体育館には数多くの生徒達が集まっているのに、ステージの上と照明室はまるで別世界。
それぞれがお話の中の様でお話ではない。
発展途上の恋愛物語。

―*END*―


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