アニメ補完計画

□夏美 ロミオとジュリエット?
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「ドロロ、私達も照明の準備しに行こう」
「こ、小雪殿」

小雪に手を引かれ、ドロロは戸惑いながらも歩き出す。
軽やかに歩く小雪とは対照的に、ドロロの足取りは重い。
明るく振る舞う小雪が心配で仕方がないのだ。
それは、小雪が夏美を慕っていることを十分に分かっているから。
何か声を掛けるべきかどうか迷っている内に、小雪に促され、完全にタイミングを逃してしまった。
それでも、先程からずっとにこやかでいる小雪に、ドロロは疑問を投げ掛けずにはいられない。

「小雪殿、良かったんでござるか?」
「何が?」

キョトンとした顔で聞き返されてしまい、ドロロは一瞬躊躇った。
自分の思い過ごしか?
それならばそれでも構わないかと、遠慮がちに口を開く。

「夏美殿と一緒に劇をやりたかったのでは?」
「うん、そうだったんだけどね。
 私よりもギロロの方が、夏美さんは嬉しいと思って」

少し寂しそうな口調だが、その表情は穏やかだ。
ドロロは内心、やはり小雪が無理をしているのではと気が気ではない。

「私ね、夏美さんのこと大好きなんだ!
 でもやっぱり、ギロロの“大好き”とは違う気がするの。
 今もね、夏美さんとギロロが一緒に劇に出れて良かったぁって本当に思ってるんだよ!」

そう言ってはにかむ様に笑う小雪。
ドロロはこれが彼女の本心なのだと感じ、安心した。
忍びは孤独なものだと教えられ、育ってきた小雪。
里を離れ、初めて出来た友達は、忍びではない普通の女の子。
多少過剰な位の友愛になってしまっても仕方がない。
それを、小雪自身も分かっているのだろう。
だからこそ、友人の喜びを素直に受け止め、自分のことの様に喜ぶことが出来る。

「それにね、ギロロ…ずっと夏美さんの相手役やりたそうに見てたくせに、それが言えなくて落ち込んでるんだもん。
 見てられなくなっちゃったよ」
「小雪殿は優しいでござるな」

小雪がえへへと笑う。
それは、ドロロに誉められた照れ笑いというよりは、確信めいた笑顔だった。
何故なら、全て自分が思った通りの展開になっていたから。
無意識だったのかもしれないが、夏美はギロロが文化祭に来ていると知った時から、代役はギロロにしてほしいと思っていたのだと思う。
だからこそ、実際に人手不足とはいえ、忙しそうにしているケロロ達に頭を下げて手伝いを頼んだのだろう。
ギロロはギロロで、恐らく夏美がそこに置いたのであろう台本を、しっかりと覚えていた。
あとはギロロが相手役に名乗り出て、全ては上手く進む筈だったのだ。

「あそこで私がやるって言わなかったら、ギロロはきっと諦めちゃってたと思うから」
「ギロロ殿は夏美殿のこととなると、気弱になってしまうでござるよ…」

二人が、少々呆れた笑顔で顔を見合わせる。
その時、劇の開始を知らせるアナウンスが流れた。
小雪は急いでドロロに自分達の役割を教える。

 
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