アニメ補完計画

□ちびケロVSちび冬樹
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「ご、ごめんね!私変なこと言っちゃって…」
「いえ、違うんです。
 私はまだまだ未熟者で、おじ様に釣り合う様な立派な女性じゃないから…。
 でも、おじ様が誰かに取られてしまうのも凄く嫌で…。
 だから、せめて自分の気持ちに正直でいることぐらいしか出来ないんです」
「モアちゃん…」

精一杯の笑顔を作るモアに、やはり凄いと思ってしまう。
自分自身にさえ言い訳ばかりしている夏美とは大違いだ。

「でも、夏美さんも同じだと思いますよ?」

モアの言葉に驚く。
夏美には理解出来なかった。
こんなに違いすぎるのに、一体何が同じなのだろうと。

「夏美さんも自信がないだけなんだと思います。
 自信がないから弱気になって、色んなことを考え過ぎちゃってるんですよ!
 私から見れば、夏美さんはとっても素直な方です。
 てゆーかぁ、魅力満載?」

ニッコリと微笑むモア。
敢えて誰に対してとは言わなかった。
誰が見たって夏美の態度は分かりやすい。
それは、サブローに対してもそうだが、その違いは歴然。
モアの言葉を夏美がどう捉え、どちらに当て嵌めるかは分からない。
けれどきっと、どちらが真実なのか気付くのもそう遠くない未来だろうと、モアは確信さえしていた。

「頭で考えるよりも、心で感じるもの、心が動くことが全てですよ。
 それは、ドキドキするだけが真実とは限らないんです」

早く本当の気持ちに気付いて欲しい。
この二人にとって、結ばれることがゴールではないと知っているから。
立場も種族も違う二人。
いつ引き離されてしまうとも限らない。
モアは時々、それを伝えられないもどかしさで胸がいっぱいになる。
最愛の人を想う苦しさと似ているそれは、モアを押し潰してしまうのではと思う時もあった。
それでも口に出してしまう訳にもいかない。
無力な自分を呪いながら、祈る様な気持ちで夏美を見つめる。

「心が、感じて動く…」

夏美は噛み締める様に呟く。
モアの言葉はまるで今の夏美を見透かしている様だった。
自分が何に迷い、何に戸惑っているのか。
そして、何から目を背けているのかを的確に射ぬいている。
本当は全く自覚がない訳じゃない。
ただ違い過ぎるから、認めない様にしてる。

「…モアちゃんの言う通りかも」

考えはいつも同じ所に辿り着く。
それは“恋ではない”と。
けれど、そう思うと胸が苦しくなるのも事実。
まるで、心が“違う”と叫んでるみたいに。

「まだ…ハッキリとは分からない、けど…。
 私も…誰かに取られちゃうのは、嫌…かな」

俯きながらポツリポツリと言葉を繋げる。
チラリと送る目線の先には無邪気な寝顔の赤いケロン人。
モアはホッとした様に口元を緩めた。
ほんの少しだけ、夏美は何かが吹っ切れた様な顔をしていたからだ。

「お互い、大事な人に想いを伝えられるまで、頑張りましょうね。
 てゆーかぁ、一致団結?」
「…うん!
 ありがとう、モアちゃん」

満面の笑みで微笑み合う少女達。
どちらともなく視線は、目の前で寝息を立てる、愛しい人へと向けらた。
彼が目覚めた時、子供の可愛らしさを理由に、抱き締めたら怒るかな?
そんなことを考えながら、飽きることなく二人はその安らかな寝顔を見守った。
彼らが目覚めるその時まで。

―*END*―

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