アニメ補完計画
□ギロロ 七つの顔の男だぜ
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「ねぇ、ギロロ」
「な、なんだ?」
ずっと目の前の炎を黙って見詰めていた夏美は、先程から頭に引っ掛かっているモヤモヤとした疑問を、思い切ってギロロに尋ねてみる事にした。
「あのね、さっきの七人のギロロのことなんだけど…」
「すまなかったな。
手違いでああなったとはいえ、お前達に迷惑を掛けてしまって」
やはりと思ったギロロは、銃器を磨く手を休め、素直に頭を下げる。
一方夏美は、まだ言い終わらない内にギロロが謝ってきたので、慌てて否定した。
「ち、違うのよ。怒ってるとかそんなんじゃなくて、ちょっと聞きたいことがあっただけ。
そりゃまぁ大変だったけど…でも、それはアンタも同じでしょ?
好きで分裂したわけじゃないんだし、元々はボケガエルが企んだことなんだしさ」
「それはそうだが、事実は事実だ」
「もう、本当にいいんだってば!
ちゃんと片付け手伝ってくれたし、アイツから助けてくれたのもアンタだったんだから。
ね?ありがとう」
いつまでもすまなそうな顔をしているギロロに、夏美は満面の笑みでお礼を言った。
思わず見とれてしまいそうなその笑顔に、ギロロはホッと胸を撫で下ろす。
が、徐々に恥ずかしさが込み上げてきて、慌てて話を逸らした。
「と、ところで、聞きたい事とは何なんだ?」
「うん。あのね、さっきの七人のギロロは…ギロロの中にある潜在能力なのよね?」
「クルルの話によると、その様だな」
「てことは、あのギロッぺってヤツの力がギロロの本当の力ってことよね?」
「そういう事になるな」
「そう…よね…」
「何が言いたいんだ?」
徐々に小さくなっていく声に、ギロロは心配で聞き返した。
夏美は、先程の笑顔が嘘の様に、表情は暗くなってしまい、俯く。
そのまま顔を上げる事なく、ボソリと呟いた。
「ギロロって、本当は私なんかじゃ全然敵わないくらい…、強いんじゃないの?」
「そ、それは…」
夏美の気にしている事が何なのか分からず、ギロロは返答に躊躇してしまう。
(なぜ突然そんな事を聞いてくるんだ…?
ま、まさか…俺が惚れた弱みから、夏美には敵わないという事に気付いたのか!?)
一人パニクるギロロを他所に、夏美は俯いたまま、独り言の様に呟く。
「宇宙人だし、侵略者なんだもんね。
普段は全然そんな風に見えなくても、本気を出したら…私なんかじゃどうにも、出来ないんだわ」
夏美の表情がより一層暗くなる。
ギロロは小さな溜息を吐くと、ずっと手にしていた銃器を隣へ置いた。