企画モノ

□いつも考えて
2ページ/8ページ


皆が同じ思いだった。
見た所、基地を破壊された形跡はどこにもない。
加えて、この秘密基地はありとあらゆるセキュリティシステムが複雑に入り雑じっている。
それは、敵性宇宙人によっては侵入の仕方や攻撃の類いが違うからだ。
何度となく敵襲されたデータを元に、どんな事態にも対応出来る様に出来ている。
撃退までは無理だとしても、隊員達への自動非常事態通知や侵入までの足止めは出来る程度に。
それが、今回は何一つ作動した様子がない。

「敵が外から基地内の防御システムを停止させ、侵入した…という事でござろうか?」
「いや、そうすればクルルが気付くだろう」
「空間を利用して直接侵入したってのはどうですぅ?」
「エネルギー反応が出るし、それもクルルが直ぐに気付くでありますな」

ならばどうやって…。
四人は俯き考え込む。
そして、考えられる可能性を思い浮かべ、各々が嫌な予感に目眩を起こした。

「ま、まさか…ね」

妙な沈黙を破ったのはケロロだった。
それぞれが既に一つの結論に行き着いている。

「あー…黄色兄さんならやり兼ねないですぅ…」
「い、いやまさか。いくらアイツとてそんな事は…」
「で、でもそう考えると辻褄が合う様な…」
「確かに…ドロロの言う通りであります。
 てか、それしかなくねぇ!?」
「そうですぅ!どう考えても、黄色兄さんが自分でシステム落として誘拐させたとしか思えねぇーですぅ!!」

タママの叫びに一同は静まり返った。
何故そんな事をと思っていても、“アイツなら暇潰しにやり兼ねない”と誰もが思っているからだ。

「はっ!そういえば!!
 モア殿!システム起動させた時、エラーとか出た!?」

ケロロは突然振り返り、普段はクルルが座っている椅子で、ずっとシステム点検をしていたモアに訊ねる。
モアも手を動かしながら話しを聞いていたのだろうが、話しに参加出来る程の余裕はなかった。
それを全員分かっていたからこそ、誰一人モアに声を掛けなかったのだが。

「え?あ、はい!
 エラーなどは出ませんでした。
 てゆーかぁ、正常起動?」
「やっぱり…」
「何がやっぱりなんだ?ケロロ」

ケロロはわざとらしく深い溜息を一つ吐く。
隊員達に向き直ると、改まった口調で言った。

「どうやら間違いない様でありますな…。
 今回の犯人は…、クルル曹長であります!!」

一同がやっぱりと内心納得をした。
けれど、あまり考えたくない結果でもある。

「何故、クルルだと?」
「簡単であります」

クルルは全システム及びセキュリティに認証コードと暗証番号を掛けている。
それは起動時にはもちろん、停止時にも必要なものだ。
外的破壊以外でシステムを停止させる為には、それがなければ不可能。
だが、それを解読する為には、クルルらしい複雑且つ捻くれた手順を踏まなければならない。

「本人であればものの数秒でありましょうが、それ以外の者が解こうとすれば丸三日〜一週間は掛かるでありましょうな。
 なのに、我輩が来た時には既にシステムは停止していた。
 更に、モア殿は何の障害もなくシステムを起動出来た。
 モア殿はクルルからパスワード聞いてないよね?」
「はい、モアは操作法などは教えてもらってますが、パスワードまでは聞いてません」
「ということは、クルル本人が我輩達の混乱を煽る為に“停止させた様に見せ掛けた”と考えるのが自然であります」
「では、隊長殿が見たというロボットは?」
「恐らくクルルが作った物。
 あの程度であれば、ブリキの玩具にナノラを掛ければあっという間に出来るでありますよ」

また妙な沈黙が辺りを包み込む。
皆、クルルがそれを実行に移した原因を探しているのだ。
“単なる暇潰し”以外の“正当な理由”が何かあると願う様に。
突然、静まり返ったラボ内に、ピピッという電子音が響いた。

「おじ様!クルルさんから通信です!」

モアの報告後、直ぐにあの陰湿な笑い声が響いた。
一同は正面のモニターに目を向ける。
だが、音声通信のみの様で、そこにクルルの姿は映し出されなかった。

『よぉ、隊長。名推理じゃねぇか。
 クーックックックッ』
「ちょっとクルル!
 あーたねぇ?一体どーゆーつもりなのさ!?」
『クックックーッ。
 もう検討位ついてんだろ〜?それで正解だと思うぜぇ』

一同に陰が落ちた。
皆、クルルの悪戯に振り回される事は少なからず馴れている。
けれど、外的ダメージがないとはいえ、捕らわれたクルルを心配していた事も事実だった為、何とも言い難い感情が渦巻いていた。

『ククッ。辛気臭い顔すんなよなぁ?
 侵略活動も一向に進まない。作戦もマンネリ化してきてる。
 丁度良い刺激だったろぉ〜?』
「そういう問題かっ!
 貴様が暇を持て余していただけだろうが!!」
『もちコース!
 まぁ俺様からのサプライズっつーコトで。
 クーックックッ』
「サプライズって…」
「やってらんねぇーですぅ」
「全くでござるな」
「もう良いからさっさと戻って来い!!」

それぞれが溜息混じりの呟きを洩らす。
ギロロは既に怒りが頂点に達している様だ。
きっと今クルルが戻って来たら、夜まで怒鳴り散らすか、暫くは再起不能状態にされるだろう。
そして、それを止めようという考えは誰一人として持ち合わせていない。

 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ