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□自分の存在価値
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「センパイ。
 俺、ケロンに戻る事になった」

本部からの要請が来たのは数分前。
協力して欲しいだの迎え入れたいだのと体の良いコトを言っていたが、実際は強制だ。
何とか出来ないかと軍のデータを覗いてみたら、他の連中じゃどうにもお手上げ状態。
俺にお声が掛かったのは最後の手段だったんだろーよ。

「え、良かったじゃないか!
 戻るという事は本部だろう?前と同じ所か?」
「ああ。
 今やってる研究が、俺様がいなきゃどうにもならねーんだと」
「という事は中枢区か。
 昇進も出来るんじゃないか?」
「多分な。あそこは佐官以上じゃねーといらんねーから」
「やはりお前は凄いな、クルル」

自分の事みたいに喜んで…。
アンタならそう言うと思ったぜ。
俺は、アンタといられんなら、一生曹長でも、弾かれ者でも、凄くなくても構わねーのにな。

「どうせ退屈な仕事だろーよ」

アンタを感じられない所なら、どんな仕事だって退屈だ。
どんだけ掛かるのかもわかんねーし。
下手したら戻ってすら来れなくなるかもしんない。
本部の連中、俺が扱いにくいからって鬱陶しがってるクセに、俺の頭脳は必要なんだ。
これ見よがしに無理難題を押し付けて俺を戻さない可能性だってある。
昇格なんざさせられたら尚更だ。
んな状態で、恋人でもないアンタに「待っててくれ」なんてコトも言えねーし。
アンタも「行くな」なんて言ってくれるわけねーしなぁ。

「お前にしか出来ん事なのだろう?
 遣り甲斐あるかもしれんぞ?」

んなアッサリゆーなよ…。
確かに科学者としては興味ある内容だったが。
アンタは寂しくねーのかよ?

「どーだかねぇ…」
「で、いつ発つんだ?」
「…今夜、0時だ」
「そうか、急だな。
 小隊のオペレーターはどうなる?」
「あぁ、まだ誰が来るかはわからねーが、俺様の後釜だかんなぁ。
 それなりの奴が来んじゃね?」

頼むから、どんな奴が来ても惚れたりしないでくれよ?
って、もう日向夏美にベタ惚れしてんだからそれだけはねーか。

「また暫くは侵略どころではなくなってしまうな…」

結局アンタの頭ん中は、ソレか日向夏美のコトしかねーんだよな。
俺の半分…いや、数十分の一でもいいから、俺のコト思ってくんねーかなぁ…。

「引き継ぎなんかもしてる時間ねーしな。
 まぁマニュアルくらいは置いといてやるけどよ」
「誰が見ても分かる様なものにしておけよ?」
「ハイハイ、分かってますよ」
「まぁ、いざとなれば俺が少し位は教えられるか?
 コンピューターはともかく、兵器類ならば扱えるしな」

………、そうだよっ!?
新顔なんざ入って来たら、ボンクラ隊長は丸投げ、ドロロやタママはココにいねーし。
ギロロ先輩が教育担当する可能性大じゃねーかッ!!
テキトーでいっかぁなんて思ってたが、とんでもない!!!
先輩の為にも完璧なマニュアル作っとかねーとな。

「大丈夫だって。
 完璧なマニュアルを作ってやんぜぇ〜」
「どうしたんだ?
 やけにやる気じゃないか?」

そりゃぁアンタを外敵から守る為ですから。
何でもやりますよ?俺様は。

「ケロロ小隊オペレーターとしての義務ですから」
「…貴様から義務なんて言葉が聞けるとは思わなかったぞ?」
「んだよ、その心底有り得ないって顔は。
 まぁ、俺様自慢のシステムを勝手に弄られても困るしな」
「あぁ、成程な」

そっちだと納得すんのかよ!
ま、本当の理由なんざ言えねーから構わねーけどさ…。

「そこら辺もしっかりと俺が見張っていてやる。
 お前が戻って来た時、困らん様にな」

 
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