SS

□居心地の良い空間
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ドキドキドキドキ。

心音がいつもより早く、ハッキリと聞こえる。
身体の右側は、異常に熱を持ってるし。
繋いだ手には汗が滲んでる。
それでも相手は気にせず、振りほどこうとはしない。
まぁ、繋いでるんだから、もしかしたら相手のモンかもしれないが。

ドキドキドキドキ。

窓の外に見える、移り変わる景色を眺めたり、次に取り組もうと思ってる実験のコトを考えたり。
必死で別のコトを考え様としてるのに、全然効果がない。
時折大きく揺れるバスの振動で小さな声が洩れる度、この心音が隣の相手に伝わったんじゃないかとヒヤヒヤだ。
けど…

「ギロロー!っと、寝ちゃったんでありますか」
「あぁ、よっぽど疲れたんだろうよ」

横目でチラリと隣の先輩を見た。
赤い身体を上下に規則正しく揺らしながら、俺の肩に頭を預けて眠ってる。
俺の位置から表情は見えない。
だが、先輩が安らかな顔で眠ってるのだけは分かる。
だって、俺の手を握り締めてきた時、先輩は確実に幸せな夢を見てたんだろうから。
 
 
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