アニメ補完計画

□ギロロ 七つの顔の男だぜ
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空に星が輝き出し、辺りを焚き火の炎が明るく照らし出す。
中心部から離れている為か、都会の割には聞こえて来る喧騒もない。
現在日向家の庭を支配しているのは、パチパチという火花の弾ける音だけ。
つい先程までの騒がしさが嘘の様だ。
そんな静けさ中、ギロロは今日一日の出来事を思い返して、深い溜息を付いた。
自然と銃器を磨く手も止まる。

「はぁ…」
「お疲れ、ギロロ」

ふいに背後から声が掛かる。
その柔らかな声に、飛び上がりそうな程慌てて振り返ると、声の主は笑顔を見せた。

「な、ななな、夏美!?
 ど、どうしたんだ?」

ギロロのツンデレとはいえ、愛情ある接し方が功を奏し、最近では夏美が自らギロロの元を訪れる回数が増えて来た。
大抵はギロロの焼く焼き芋が目当てなのだが。
ギロロはそれでも構わない。
肝心なのは、夏美が自らの意思で自分を訪ねてくれる、頼ってくれているという事なのだ。
だが、今日は焚き火をしているとはいえ、焼き芋を焼いている訳ではない。
ギロロは内心、夏美に何と言おうかと焦っていた。

「ちょっとねー。
 今日は冬樹とボケガエルが一緒にお風呂入ってるのよ。その間一人で暇だったからさ」
「そ、そうか」

本当は、夏美がギロロの所へ行く口実と変に邪魔をされない様、二人を追い払ったのだ。
それを知らないギロロは、焼き芋が目的ではなく、ただの暇潰しに自分を選んでくれた事が嬉しくて仕方なかった。
と同時に照れ臭く、そっぽを向いて、無意識に止めていた手を再度動かし始める。

「ねぇ、隣に座ってもいい?」
「…好きにしろ」

夏美が隣に座るという嬉しさとは裏腹に、出て来る言葉は素っ気ないもの。
あまりにもギロロらしい物言いに、夏美は気を悪くする事もなく、隣に腰を下ろす。

(何か話し掛けた方が良いのか!?
 しかし…、ただの暇潰しとはいえ、なぜ夏美はここに来たんだ?
 俺何かと話をした所で大して面白くもないだろうに…。
 も、もしや!さっきの事をまだ怒っているんじゃ…)

暫く続く沈黙にギロロの焦りは募り、銃器を磨く手にも自然と力が入る。
脳内をフル回転させ、色々と考えてはみるも、思い付く事は先程の自分がしでかしてしまった失態ばかり。
 
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