企画モノ

□笑顔をあなたに
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ぼんやりと空を見上げる。
澄み切った青空には一切の雲も存在しない。
隠れる場所のないその空で、何一つ余計な物がないことは一目瞭然。
それでもどこかに何かないかと目を凝らして探してしまう。
あるはずはないと分かっているのに…、それでも、果てしなく続く空のどこかに。
これだけの広さならば見逃した所があるのかもしれないと。

「はぁ……」

小さな溜息が漏れた。
こんな清々しい天気の日には似つかわしくない溜息が。
同時に頭上を見上げている首にも僅かに痛みが走る。
いっそのこと屋根まで上がって寝転んでしまおうかとも考えたが、それはちょっとあからさまな気がして。
知り合いや家族に見られたら妙に納得されそうな気がして。
ベランダの隅からコッソリ見上げてるしかない。
仕方なく視線を一度下へ向ける。
軽く首を回して目に入ってきた物に手を伸ばした。

「あ、冷たい」

この一角を陣取る前に持って来ておいた紅茶の入ったポットがもう冷たい。
その上中身は空だ。
確か三杯分はあったような気がしたけど…いつの間にか全部飲み干していたらしい。
そんなに長い時間ここにいるっけ?と首を傾げた瞬間、ブルリと身体が震えた。
思わず自分を抱き込む様に両腕を抱えてコートの上から擦る。
ヒンヤリとした布地にまた驚いた。
そういえば、敷いている座布団も足の上に掛けているブランケットも、どこか冷たい。
外気の冷たさもさることながら、自分の体温が下がってきている証拠だ。
温もり、というか暖かさがほとんど感じられない。

 
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