企画モノ

□親友以上? 隊長未満っ!!
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ある晴れた昼下がり。
いつもと変わらない地球侵略最前線基地。
果たして使用する日は訪れるのだろうかと疑問に思う武器を、ギロロは今日も一心不乱に磨いている。
と、そこへテント内から通信を知らせるアラームが聞こえて来た。
週に一度、多い時では二・三度不定期に鳴り響く音。
ギロロは眉間にシワを寄せると盛大な溜息を吐き、重たい腰を上げた。

「――何だ?」

少々不躾な応答ではあるが、相手は既に分かっている為、ギロロは気にしない。
当然の様に相手もそれを気にしない為、今更変えようとも思わない。

『ギロロ、今日は出るまでに1分39秒も掛かったぞ?
 何をしていたんだ?』

ギロロの行動が気になる相手としては、その様子が探れればどんな質問でも構わないのだが、ギロロは相手の行動を軍人としてのものだと思い込んでいる。
故に、自分のコールに中々出ない苛立ちを遠回しに嫌味として言われても、真面目な奴だとしか思わず、改善しようともしないので、出だしはいつもこんな感じだ。

「テントの外で武器磨きをな」
『戦地で大事な通信器具を肌から離すなど…、命取りになり兼ねん行為だな』
「うっ…。
 そ、それよりガルル!今日は一体何の用事だ!?」
『兄が遠く離れた弟を心配して連絡してはいけないのか?』
「そうじゃないが…、そんな頻繁に連絡せずとも変わりはない!」

週に数回繰り返される会話は呆れる程に変わりない。
この後は健康状態と侵略状況を聞かれ、かと思ったら自分の帰りがいつになるのかという話しにすり替わり、最終的には次に会う段取りなどの話しとなってしまっている。
その事が分かっていながらも、ギロロは毎回兄に踊らされてしまうのだ。

『変わりはない、か。
 それはある意味問題発言だな』
「何?」
『実はな・・・・・』

兄からの通信が終わり、暫く身動きの取れないギロロ。
いつも通り、心配を装ったラブコールだと思っていた分、予想外な通知に驚きを隠せない。
かといって、そのままジッとしていても仕方なく、ギロロはテントを出た。
向かった先は、平和ボケし放題の上官の元。

「ケロロッ!」

何をしているかなど、容易に想像出来るのだが…。
それでも、目の当たりにしてしまうと込み上げてくる怒りを止められない。

「貴様ッ!!!
 何度同じ事を言わせれば気が済むんだッッ!!!」
「ゲッ!ギロロ…」
「こんな玩具なんぞで遊んどらんで侵略をせんかーっ!!!」

お決まりの流れ。
お決まりの喧嘩。
お決まりの時間。

「こんなってなんだよ!?こんなって!!
 ガンプラはねぇ・・・・!!」

最早マンネリとなってしまったこのやり取りに、聞いている者は『毎度毎度よく飽きないなぁ』などと思ってしまう。
まぁ、当事者である二人にはある種のコミュニケーションなのだろうから、飽きるも何もないのだが。

「貴様がそんな事ばかり言っているから…っ!
 分かった!もういいっ!!好きにしろッ!!」
「言われなくても好きにするもーん!」

いくらギロロが本気で怒っていても、時間が立てば元に戻れると分かっているケロロは、いつも通り。
仕事熱心な彼に煩わしさを感じつつも、一日一回この怒鳴り声を聞かなきゃ落ち着かないのだ。
だから全然気にも止めていなかった。

「これ以上は我慢の限界だっ!
 貴様がそんな態度を続けるというのなら、俺はケロン星に戻るっ!!」

軍に忠誠を誓っているギロロからは考えられない発言に、ケロロは目を見開いた。
人一倍地球侵略に打ち込み、生き甲斐だと言っても過言ではなかった彼が。

「ま、まっさかぁ〜、ギロロが任務を途中放棄するワケないジャン〜」

ましてや地球にはギロロの想い人もいる。
どうせ自分を焚き付ける為に言っただけだろうとケロロは思っていたが、ギロロの目は真剣だ。
長年の付き合いでなくとも、その言葉が本気だと分かる。
無言のまま踵を返そうとするギロロに、ケロロは焦った。

「ちょっ!ちょっと待ってよ!ギロロ!!」

今までも何度か見捨てられそうになった事はあった。
だがその全てが見せ掛けで、ギロロはいつでも側にいてくれる。
『その内見捨てられっかもなぁ〜』と思ってみても、冗談程度で思うだけ。
本気で彼がそんな事する筈はないと、ケロロには絶対の自信と安心感があった。
だから、信じられない。
呆れられたり、怒られる事はあれど、ここまで冷たい視線を向けられたのは初めてだ。

「何だ?」
「…冗談、だよね?」
「冗談は好かん」
「いつもみたいに言ってるだけなんだよね?」
「それが分からん付き合いではなかろう」
「そうだよ!?だから信じらんない!
 ずっと一緒にやってきたじゃん!!」
「それもここまでという事だ」
「ギロロッ!!」

震えた声でその名を呼ぶ。
が、相手の決意は変わらない。
ケロロが一言「侵略をする」と言えば、取り敢えずでも引き止める事が出来るのだろうが…。
あまりにもショックが強すて、そこまで思考が回っていない様だ。

「…自分がどうするべきか、良く考えるんだな」

勢い良く開け放たれたままだった扉は、その時とは反対に、パタンという軽い音を立てて閉まった。
その音がケロロには無情に響いて聞こえて、虚しさが広がる。
身体中から気力が抜けていくのが分かるのに、座り込む事すら出来ない。
文字通り、呆然と立ち尽くしていると、天上からカタンという音が響いた。

「隊長殿!今日山で取れた・・・ど、どうしたの!?ケロロ君!?」
「え?あぁ、ドロロ…」
「…何か、あった?」
「ど、どうしてでありますか?
 我輩いつもと一緒であります☆」
「…じゃぁ、何で泣いてるの?」
「!?」

知らぬ内に流れていた涙。
気付いてしまうと止まらない。
ケロロは胸に詰まった思いと共に、今あった事をドロロに全て話した。

「…、確かにケロロ君の態度や発言は、任務遂行に信念を燃やすギロロ君にとっては我慢できないことかもしれない。
 でも、ケロロ君のそういうとこ、僕もギロロ君も良く分かってるし。
 何より、ギロロ君が本気でケロロ君を突き放すなんて信じられない」
「でも、あの目…本気だった、」
「何か、他に理由があるんじゃないかな?」
「…どんな?」
「それは分からないけど、痺れを切らせただけとは思えないんだよね…。
 ねぇ、ケロロ君。僕に任せてくれない?」

どんな理由があれど、ギロロが自分の元を離れるなど、絶対に信じたくないケロロは、藁にもすがる思いだ。
二人の幼馴染みであるドロロならば、ギロロの本心を上手く聞き出す事も出来るかもしれない。
ケロロは迷う事なくドロロに一任した。


 
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