企画モノ

□盛大で壮大なX'mas大作戦☆
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リビングのソファーに浅く腰を掛け、真剣な眼差しで若い子向けの雑誌を睨み付ける様にして見詰めながら、思考を巡らせている夏美。
ここ数日の間、毎日見られているその光景は、手にしている書物が教科書や参考書の類であったのなら、とても勉強熱心な優等生に見えただろう。
だが実際手にしているのは、夏美位の年頃の女性ならば一度は読んでいるであろう華やかなファッション雑誌。
たまにこうして雑誌を読んでいる姿を目撃する事はあれど、ここまで真剣に読んでいる姿は、恐らく弟の冬樹でさえ見た事がない。
なんせ、制服から私服に着替える事も忘れ、ソファーの傍らには学生鞄と買い物袋がそのままの状態で放置されているのだ。
しっかり者の夏美からは考えにくい光景である。
まぁ、他の住居人が不在だからこそ出来る事なのかもしれないが…、それにしてもやはり珍しい。
特に今日は、当番だからと部活の助っ人を断り、慌ただしく買い物を済ませて帰って来ているのだ。
この雑誌を読む時間を確保する為に急いだとしても、かれこれ一時間近くは経過している。
それなのに、雑誌のページは一向に先へ進む気配がない。
夏美は中々納得のいく結論を導き出す事が出来ないらしく、何度も同じページに目を走らせていた。

「あー…、もぉーどーしよぉ…」
「どうした?夏美」
「きゃっ!?」

黙々と考えている事に限界を感じ、ついに漏らした溜息まじりの不満。
それを、たまたま地下基地へ向かう途中のギロロが耳にし、声を掛けた。
何とも悪いタイミング。
もしも自分が声を漏らさなければ、ギロロは集中している自分を気遣って、絶対に声を掛けずに素通りしてくれたであろうに…。
聞かれても困る返答と、ギロロに対しての挙動不審な自分の態度に申し訳なさを感じて、思わず顔をしかめてしまった夏美。

「す、すまん。
 驚かせるつもりはなかったのだが…」

当然自分が悪くて夏美が気分を害したと思い込んでしまったギロロは、反射的に謝る。

「う、ううん!
 なな、なんでもないから、気にしないでっ!!」

夏美は首を左右にブンブンと振ってソレを否定すると、顔を薄っすら赤らめたまま、慌てふためいてリビングを出て行ってしまった。
鞄と買い物袋をソファーの脇に置き忘れたまま。
バタンと音を立てて閉まるリビングの扉。
何やら困っている様だった彼女が心配で声を掛けたつもりのギロロは、ポツンとリビングに取り残されてしまい、戸惑う。
自分が何か適切なアドバイスが出来るなどと思っていた訳ではないのだが、それでも、彼女が困っているのならば出来る限り力になりたい。
そんな健気な思いが当の彼女に伝わる筈もなく、結果的に彼女をこの場から追い出す形となってしまったのだ。

(声を掛けるなど、余計な事をして怒らせてしまったのだろうか・・・?)

夏美の事となるとどうもマイナス思考に考え過ぎてしまうギロロは、つい先日も同じ様な事で落ち込み、周囲に心配を掛けていた。
これはまた別のお話しなのだが、あの時も夏美の“ダイエット”を“嫌われた”のではと考え過ぎた事が原因である。
当然、夏美の紛らわしい言い方のせいでもあるのだが、何と言っても似た者同士。
お互いに鈍いが故に、自分の言動で「まさかそう思うだろう」とは思わない。
そして繰り返す。
今回はそこまで重度の落ち込み様ではないものの、しょんぼりと肩を落としたギロロは、ソファー横に放置されていた買い物袋を手に取り、中身を冷蔵庫へ仕舞うと、トボトボとした足取りでリビングを後にした。

 
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