唖然

「ん。」

そう言ってその人はタバコに火をつけた。

「でも、きっとなれるよ。アナタはァタシと違って頑張り屋さんですから」

ァタシは微笑みながらその人のタバコを吸う姿を眺めてた。

「さ〜ね」

その人はタバコを消してそそくさとベッドに寝転んだ。

ァタシは何も言わず座椅子に座って今の空気を淡々と感じていた。
また沈黙が流れる。
時計の音が耳に痛くてまたタバコに手が伸びそうになって、何かが聞こえた。

「……しい。」

「えっ?何て?」

何かを呟いたその人の声はか細くて、ァタシは本当に聞こえなくて聞き返した。

「寂しい…。」

ァタシは何て言ったらいいのか解らなかった。
ァタシは何かを言っていいのか解らなかった。

ァタシは何を思えばいいのか解らなかった。

解らなかったから…

ベッドに寝転ぶその人の大きな背中に手を置いて

「大丈夫だよ。」

とだけ言った。

つもりだった。

でも気付けばァタシはその人の隣に寝転んでた。背中を向けてたのはァタシのどんな心の現れなんだろう。

お互い口を開かない。

けど、何か心地よかった。タバコに手が伸びない沈黙は初めてだった。

そんなァタシの背中に、
眩暈がするほど温かい感覚が伝わってきた。

ァタシは伝わる温もりに包まれながらまた言った。

「大丈夫」

そう言いながらァタシの中で


ナニカガキレタ。


振り返って、その人と向き合って、ァタシはその人の身体を真正面から抱きしめた。

筋肉質な身体。

大丈夫だなんて簡単に言って、人を慰めた様ないい気になって。

ァタシが癒されてんでしょ?心地よいなんて言って甘えてみて。ゥチはまるで何かに疲れた人の休憩所みたいに自分で思って、


結局何かを埋めて貰ってんのァタシでしょ?

そんな事とっくに気付いてる癖にそれを認めろよ!!

ァタシは何?何がしたいの?どうなりたいの?

多くを求めすぎなァタシはなんて強情なャツ。

今ァタシが抱きしめてる人はォトコ。

ァタシはォンナなんだ。
面倒くせぇ…。

脳裏にそのコトバがずっとループしたまま

ァタシはそのォトコを抱きしめる手に力が入った。

それと同時にそのォトコがァタシを抱きしめる力も強くなったのを感じた。優しくて温かくてほっとする人…

ァタシは自分に苛立ちながらひたすらその人を抱きしめた。

まるで自分に何かを教え、認めさせる様に。

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