空っぽ
長い沈黙。汗。
ァタシはタバコに手を伸ばした。mallboroだった。理由は…同僚がまとめた箱の一番上にあったから。沈黙に耐えられなくてタバコに伸ばした手が震えてるのがはっきり解る事がァタシの動揺を表す。
「何?何で黙ってんの?」
ァタシは平気なフリをして聞いた。
「お前な、何でそんななの?」
「は?」
同僚の言ってる意味が解らなかった。
「どういう事?」
ァタシは煙を吹きながらバカらしく聞いた。
「だから、お前、根は普通にいい奴で、見た目もよくて、仕事もすんのに、何でそんなサバサバして感情出さないでタバコばっか吸って、オンナらしくないの?」
理由は解らない。
けど兎に角腹が立った。
「意味解んない。ァタシはただ、好きな服きて好きな歌唄って好きなタバコ好きなだけ吸って、別に何の支障もなくない?ましてやニートじゃあるまいし。これで働いてなくて毎日ダラダラしてたらダメ人間だろうけど、普通に仕事してるし。」
ァタシはタバコを押し消した。
「ん〜じゃなくてさ」
同僚がずっとこっちを見てる。
再び沈黙が走りそうで何だかきまずかったから、ァタシはタバコに手を伸ばそうとした。
その時
「何…」
ァタシの手は同僚に掴まれた。
「例えばタバコ伸びるこの手を掴んで」
次の瞬間、タバコを吸うはずだった【ァタシ】は同僚の胸の中にいた。
「こうして引き寄せてここに閉じ込めたら、お前はタバコを取れない」
ァタシは動けなかった。
「どした?つっかかって来いよ。」
おまけに何も言えなかった。
「お前、感情あんだよ。オンナの感情が。それ認めろ。どんなお前の時もお前は苦じゃないだろうけど、お前はオンナだ」
ァタシは同僚を睨んだ。
「その瞳もお前。気性荒いかんな」
ァタシは目を逸らさなかった。
「ん。根性ある顔だわ」
「解ったから離してくんない?タバコが吸いたい。」
どうして自分がこんな強気で意固地なのか解らなかった。
「はいはい。わりぃわりぃ。何種類もあるお好きなタバコお好きなだけどうぞ」
同僚は半分笑いながら言った。
ァタシは同僚がまとめてくれた箱を全部崩して、Philip Morrisをとった。理由は…メンソールでスカッとしたかったから。
「まあお前らしいけど。じゃ、病人の家に長居は無用だし帰るな。早く治せよ。風邪ん時はメンソだな」
スカッとしたのはァタシじゃない。
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