未来航海

□Episode3~冬島編
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女部屋にみんな集まり、ナミを囲むように眠る。
夜は私が看ることになり、ビビも静かに眠っている。

ポチャン…と水にタオルを浸け、ナミのタオルを替えた。


『…ん?』


ぐああぁあ、といびきをかく男子勢。
ふと、みればルフィの布団がどこかへ飛んでいる。


『クスッ)…』


そっと、布団を被せてやれば飯…と寝言が返ってきた。
なんか、寝相まで似てるように思えるなぁ。


『…いや、まだルフィの方が愛らしいわ…』


ふと思い出すアイツとの船の思い出…。

ああ、あのセクハラの数々…寝ぼけてるからってあれはなかったわ…。
さすがにマルコも怒ってくれたな、あれは。

と、思い出にふけていると、グイッと腕を引かれる。


『…っ!』

ルフィ「がぁああ…さんじぃ……めしぃ…」

『……サンジじゃないっての、私は…』


ぎゅうう…と抱き枕のように私を抱きしめるルフィの寝顔が、
あまりに子どもっぽくて、思わずふふっと笑ってしまった。

すると、ゆっくりと扉が開き顔を覗かすのは…。


サンジ「ーーーーっ!!!!!」

『しぃーーっ!!!』


――――――


サンジ「ぜってえおろす!!あのヤロー!!!!」

『ははっ、仕方ないよ』


寝てるんだから罪はない。と、言うとそれでもぉ…
と心底悲しそうなサンジ。


『それより、サンジ寒くない?』

サンジ「あァ、平気さ。シエルちゃんこそ、
船番は俺がするから寝てても…」

『ううん、今日は…丁度いいから起きてる』

サンジ「?」


スケッチブックと絵の具を取り出せば、興味深そうにサンジがこちらを見つめる。
少しの間黙って筆を進め、描き上げるとすげぇ…
とぽつりと声を零した。


サンジ「今日の空…?」

『うん』


絵をスケッチブックから離し、それを空へ放った。


サンジ「??」

『あ、そっか。サンジは知らないもんね』


――――――


サンジ「……ふぅ…」


船に乗った時はそんな印象はなかった。はじめは、美人な女の子。
こんな子のどこに闘う力があるのだろう、
そう思えるくらい華奢な彼女。
だが、日が経つ毎に彼女の強さは目に見えてわかるようになった。

それ故に力を持つ事の歯痒さも感じているのもわかった。
今回にしても、ナミさんを付きっきりで看病しているが、
どうもできない自分を責めているようにも見える。


サンジ「……」


"弱い"、と、彼女は決してそうは言わない。
彼女自身が"弱い"とは感じないからであろう。
ただ、"無力"であると、ぽつりと呟いてるのを聞いてしまった。


サンジ「…レディのひとり言は…聞いちゃいけねェもんだな……」


煙草を噴かし、陽が昇るのをじっと見つめた。


サンジ「に、しても…」


『あ、そっか。サンジは知らないもんね』


この言葉が引っ掛かる…。俺だけが知らないのか。
それとも他の奴らも知らないのか。

他人の過去にズカズカと足を踏み入れれる程、
図々しいことをできるワケもなく、彼女から話してくれることを待つか…。


サンジ「…俺ァ…こんなにも奥手だったか…?」


一目惚れ、とはよく言ったものだ。

そんな事本気であるとは思ってもなかった。


サンジ「怖いくらいの魅力だな…ありゃ…」


恋はハリケーンとは思うが、ここまでとは。と、苦笑いを零した。
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