未来航海

□Episode3~冬島編
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―――翌日。


ナミ「ん…?」

ビビ「おはよう、ナミさん。具合はどう?」

ナミ「…嘘…全然…」

ビビ「えっ!?本当!?」

ナミ「ええ…」


声が聴こえ身体を起こすと、ニコリと笑うナミの顔が目に入った。


『…元気になったの?』

ナミ「うん!!すーっかり!」

『そっか、よかった…』


あれ…なんでこんなにも目の前ぼんやりしてんだろ…


『(あは…まさかの感染症だった……?あれ…)』

ナミ「シエル?」

『っは…』


ふらふらと重い頭…。気分がものすごく優れない…。
吐き気まで襲ってくる勢い…。


ナミ「ねえ、シエル!?シエル!ちょっと!!」

ビビ「まさか…!」

『…はぁっ…ごめ……ビビ………』

ビビ「大丈夫!?シエルさん!?」


ビビに抱えられながら、ベッドに横になると、
とても不安そうな顔で私を見つめるナミ。


『ニコ)…平気…だよ…』

ナミ「シエル…」

『ナミの…所為じゃない…から……』


大丈夫…。と手を伸ばしナミの頬を撫でるとバカ…と私の手をぎゅっと握ったナミ。


『ふふっ……』


ゆっくり…瞼を閉じれば、深い眠りへとついた。


――――――


ナミの熱が下がったと騒げば、今度はシエルが熱を出した、と。


ゾロ「…何やってんだアイツ…」


タフそうに見えて風邪にはやられるあたり、やっぱ女なのだと思った。

…タフそうだから、か…。


ゾロ「………」


ダンベルを置き、部屋へ向かうと息を乱しながら苦しそうに眠っていた。


ナミ「ゾロ……」

ゾロ「オメエは平気なのか」

ナミ「……見ての通り」

ゾロ「……」


近づくと、薄らと瞼を開け俺の方をじっと見つめるシエル。
布団を少しずらして、口元が見えるようになると、ニヤリと口角を上げた。


ゾロ「ニヤ)元気じゃねぇか」

ナミ「はぁ!?あんた何言って…」

『コクリ)………』

ゾロ「心配してやる程でもなさそうだな」


背を向け出ていこうとした時、弱々しい声で俺の名を呼んだシエル。
振り返れば、ありがとう、と精一杯の声で言った。

バタン…


ゾロ「……心臓に悪ィ」


さっさと治しちまえ、そんなもん。張り合う相手が居なくて暇な上、
いつも背を預けてる奴が居ねぇと気持ち悪ィ。


ゾロ「………進路、異常なし」


――――――


…い

……おい

……おい、シエル……

シエル…!


『ん…………』


頬をパチパチと叩かれ、ゆっくり瞼を開けると目の前にルフィの顔。
少し辺りを見渡せば誰かの家のようだった。


ルフィ「シエル、医者に診てもらうには山登んねェといけねえんだ。行けるか?」

サンジ「アホかテメエ!!!本気で張り倒すぞ!!!」

ウソップ「そうだぞルフィ!!シエルが死ぬ!!!」


なんて騒ぐ2人を見て思わずふっ、と笑いが零れた。
布団の中からゆっくりと手を出し、それをルフィに向ける。


『ニコ)ハァ……よろ、しく…ハァ……』

ルフィ「にしし!そうこなきゃな!」


厚着させられ、ルフィにおぶられながら外に出ると一面銀世界…。
すごい…雪国なのか………。


ウソップ「本当に気をつけろよルフィ!!」

ルフィ「わかってるって!」

ビビ「もう少しだけ我慢してね、シエルさん」

『……ハァ…ハァ………な…ナミ……は………』


先ほどから見当たらないナミが心配でそう尋ねると、船でお留守番。
ぶり返しちゃいけないから。とビビ。

…そっか、とにかく元気ならいいや…。なんでも……。

ゆっくりと遠のく意識の中でぜってえ守るからよォ。というルフィの声がした…。

よろしく………ルフィ……。

















「なぁシエル、お前は…自分の価値を考えたことあるか?」

『自分の価値?』

「俺ァ…昔っから生まれてきちゃいけねぇと言われてきた」

『…………』

「生きてりゃ…存在する意味もわかる、と誰かに言われた」

『………なに陰気臭い話するのかと思えば…』

「いてっ!なんだよ!俺は真剣だったんだぞ!!」

『…私は、自分の価値は理解してる』

「え?」

『私は……、ただの人間だったはずなのに…ある日突然、

人間以下の価値と"奴ら"に言われたよ』

「!!お前…」

『頭いいからわかる?私は…………………』


『………ん…』


いつの事思い出してんだろ自分……。

ふと、上を見れば高い天井、レンガの壁……ここは…。

と、起き上がると何かが机で何かを摺っていた。


『あ、あの……』

「!!!??!!」


壁に隠れる何か…もとい獣(?)はビクビクとこちらを見つめるが…
身体丸見えで顔を隠しても……。逆じゃない…?と言うと、ビクッ!!
とわかりやすい驚き方で身体を隠す。


『えと………どちら…様…?』

「う、うるせえ人間!!…それとお前熱大丈夫か?」

『しゃ、喋った!!!』

「ぎゃあぁああ!!!!」


ドタバタガシャーーーーン!!!!と物凄い音を立てた獣。
大丈夫かと布団から出ようとすれば、おでこを押された。


『わっ、』

「ヒーッヒッヒッヒッヒッヒ!熱ァ多少引いたようだね小娘!ハッピーかい?」

『あなたは…』

「あたしゃ医者さ、"Dr.くれは"…ドクトリーヌと呼びな」

『医者……!!なら、私以外にも男が居たはず…!』

くれは「ああ、隣の部屋で寝てるよ、ぐっすりとね。タフな奴らだ」

『(?奴ら??)…そっか…それならよかった……』


と、一息ホッと、ため息を吐くと、ドクトリーヌはベッドに座り私の服を捲った。
視線を落とせば青紫色の痕は恐らく元はナミにあったもの…。


くれは「"ケスチア"って虫にやられたのさ。高温多湿の密林に住んでいる有毒のダニだ。
こいつに刺されると刺し口から細菌が入っちまって
体の中に5日間潜伏して人を苦しめ続ける…。
40度以下にゃ下がらない高熱・重感染・心筋炎・動脈炎・脳炎。
…が、小娘にゃ刺し口が見つからない。何をしてたのか知らないが…」


重感染……ナミの菌がそのまま私に移ったからか。そりゃ刺し口もないな…。
にしても高温多湿の密林ってことは、《リトル・ガーデン》だなやっぱり…。
と1人納得していると、ドクトリーヌが5日経てば楽になれた。と笑った。

その楽になれた、って言うのは治るってわけでもなさそう、
と思わずドキリとすれば、その言葉が飛んできた。


くれは「放っておいたらお前は2日後には死んでいたからさ」

『ゾクッ)………』


菌で死ぬなんてバカバカしいと思っていたが、医者を探してよかった…。
やはりかなり危険なものだったのね。


くれは「さぁ、病気の恐ろしさをわかったなら寝といで。まだ完璧に治療は済んでないんだ」

『どうもありがとう。熱さえ下がればあとはどうにでもするわ』

くれは「ほう、お前は医者なのかい?」

『いや、ただの鍼灸師だけど…基礎知識は持ってるし
自分で施しはいくらでも出来るから…』

くれは「甘いね、病気をナメてる!本来なら治療を始めて完了するまで
10日はかかる病気だ。あたしの薬でも3日は大人しくしててもらうよ!」

『3日!?待って…私達先を急いでて…』


バッと起き上がればドクトリーヌがメスを持って私の首に突きつけた。


くれは「あたしの前から患者が消える時はね…ヒッヒッヒ

…治るか!死ぬかだ!逃がしゃしないよ」

『…!!!』


こ、怖………思わず顔が引き釣りはは…と笑うと、
ドクトリーヌは退け酒を1口呑んだ。

…と、その時だった。


「ギャーーーー!!!!助けて!!!!!」
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