第2章:秘密の部屋

□秘密:忠告
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『スネイプ先生、グリフィンドール2年のアリサ・ヤシロです。』
「…………入れ。」


だいぶ溜め込んでからセブルスの返事があった。
これは、だいぶご立腹だと感じたアリサはゆっくり扉を開ける。


『お忙しいところ、すみません…あの……』
「あの2人のことか。」
『え?あ、それもあるんですが…』
「なんだ、回りくどい言い方は嫌いなのだがね。」


言い方はいつも通りのセブルスだが、明らかに顔がいつもより不機嫌だ。イラついているのか、羽ペンの先を机に何度も当てながら羊皮紙に目を通している。


『(ペン先潰れそう…)』
「言いたいことがあるなら、はっきり言いたまえ。」
『これでスネイプ先生のご機嫌が戻るとは思いませんが…フェリックス・フェリシスが完成したので見ていただけますか?』
「ほう、完成させたというのかね?」
『はい。』


おずおずと執務机の上にフェリックス・フェリシスを置く。それを見たセブルスは驚きにわずかに目を見開く。


「(これは…)」


アリサが提出したものは、セブルスが作るのと同じくらい完成度の高い仕上がりになっていた。
色、透明度、香り…全てが完璧に作られていた。
2年生でここまで仕上げる学生はまずいない。かなりの努力と時間を要したのは容易に想像できた。


『どうでしょうか。』
「……よく出来ている。ヤシロを侮っていたようだな。」
『!…ありがとうございます!』


珍しく素直に褒めるセブルスだったが、アリサは褒められたことが嬉しくて、その点には気づいていない。


「フェリックス・フェリシスをここまで仕上げることが出来たのなら、その他の魔法薬の調合もお手の物だろう。」
『スネイプ先生?』
「幸いなことに、新学期が始まったばかりで放課後も空いている。」
『…おっしゃっている意味が…』


褒めていたはずのセブルスの言葉が、だんだん怪しくなってきていることに気づく。


「これからは、我輩も本腰を入れて教授するとしよう。」
『あの…』
「喜べ、ヤシロ。しばらく調合漬けの日々が過ごせるぞ。」
『えぇーーー、そんなぁ…』


微笑んでいるはずが、悪魔のような笑みにしか見えないアリサ。前途多難なのが目に見えてわかるだけに、素直に喜べない。

そんなアリサを、セブルスは面白く見ていたが当の本人は気づいていない。


「それからヤシロ。」
『ハイ、ナンデショウカ。』
「ロックハートには気をつけろ。」
『へ?』
「本屋で絡まれていたであろう。あいつはそう簡単に諦めるような男ではない。」
『……』
「ま、せいぜい頑張ることですな。」


新学期が始まる前に、すでに目をつけられてしまったアリサ。これから始まる長い学校生活の中で、ハリーと同じくらい、またはそれ以上に絡まれるのではと思うと、先が思いやられた。


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