第1章:賢者の石
□賢者:警告2
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鏡の部屋から出たアリサは、一人談話室に戻るために廊下を歩いていた。
『先生の隣に立っていたのは私だけじゃなかった…私は何を望んでるの?……』
トボトボ歩きながら、先ほど鏡に写ったものを思い返していた。
『私の一番強い望み…先生の隣にいたい事じゃなかった?先生があの人の隣にいる事?でも、それって……』
ついには歩いていた足も止まってしまい、その場から動けなくなっていた。しばらくすると、前方から光が近づいてくる。
「おや…こんな時間に会うとは。」
『クィレル先生…』
「ひどい顔ですね。」
『すみません、すぐ戻りますから。』
「そんな状態の生徒をそのままには出来ません。来なさい。」
『!、先生!?』
前回と同じように、クィレルの執務室に連れて来られたアリサは大人しくソファーに座る。
「何があったかは知りませんが…寮を抜け出すのは感心しませんね。」
『すみません…何か、よく分からなくなっちゃって…』
「…とりあえず、これでも飲みなさい。」
クィレルが杖を一振りすると、暖かい紅茶が2セット出てきた。
『私には、どうしても力になりたい人がいるんです……』
「…」
『私なんかがおこがましい話ですが…そこまでしたいと思う相手がいて…』
「…」
『でも、その人にはずっと想い続けている相手がいるんです。』
「…」
紅茶が入ったカップを握りしめ、クィレルに自分の想いを話し始めるアリサ。そんな彼女の話しを何も言わずに黙って聞く彼もまた、辛そうな表情をしていた。
『その人が…隣にいる事を望むなら、私がしようとしてる事は間違ってるんじゃないかって…何をしに…もう分からなくなっちゃって…』
「あなたらしくないですね。」
『…クィレル先生?』
アリサが顔をあげると、真剣な眼差しのクィレルがいた。
「以前のあなたは、迷いのない目をしていましたよ。」
『…その時は…』
「何に迷っているのか知りませんが、迷う必要があるのですか?」
『それは、相手の事を考えたら…』
「ナンセンス。あなたが成し遂げたい事は相手の気持ちを考えたら達成出来ることなのですか?」
『…』
「それとも、その程度のものだったと?」
クィレルに言われて考えるアリサ。スネイプのことだから、スネイプの意見を尊重してしまえば確実に自分がこの世界に来た意味はない。必要とされない。
なら、相手のことを考えずに突っ走ればいいのか…アリサは訳が分からなくなっていた。
「はぁ…例えそれが相手にとってお節介であってもいいでしょう。」
『…』
「そこまでしてくれたんだと、自分のことを思ってくれてるんだという気持ちは十分に伝わるはずです。それに…」
『それに?』
「相手のことを考えすぎると助けられるものも助けられなくなりますよ?」
『!…クィレル先生…あなたは、』
「さ、これで話しは終わりです。寮まで送ります。」
最後の一言に引っかかったアリサだが、クィレルに話しを打ち切られ寮まで戻ることになった。