第1章:賢者の石

□賢者:クィディッチ
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「もう大丈夫ですよ。」
『ありがとございます。』
「次は医務室以外で会いたいものです。」
『あはは…善処します。』



マダム・ポンフリーからチクリと言われつつ、アリサはお礼を言って真っ先にある部屋へ向かった。



コンコンコンー

『おはようございます。スネイプ先生いらっしゃいますか?』



朝一で地下にあるスネイプの執務室を訪れる。ノックをして声をかけてみるも、中から返事はない。



コココココココ…



「なんだ…」
『やっぱり、いらっしゃるんじゃないですか!』
「迷惑という言葉を知らんのかね?」
『治療という言葉を知らないんですか?』
「……」
『中に入れてください、先生。』



しつこくノックをしたら、史上最強に不機嫌なスネイプが中から出てきた。しかし、ここまで事情を知られた今、アリサは怯むことなくスネイプに言葉をかける。

そして、執務室に入ると同時にスネイプの足を確認する。



『先生、失礼します。』
「貴様!…」
『やっぱり…きちんと手当してませんね?』
「……」
『この状態では治りが悪いどころか悪化しますよ。』
「……」
『だんまりですか?いいですよ、マダムを呼んで』
「薬は塗っている。」



アリサの投げかけに無視を決め込んでいたスネイプだが、マダム・ポンフリーを呼ぶとなるとすぐさま返事した。



『こんなんじゃダメです!薬と包帯とお湯をお借りします!アクシオ!』



アリサが呼び寄せの呪文を唱えると、薬と包帯が飛んでくる。



「その呪文が使えたのか。」
『夜な夜な練習してるので。それより!座ってください。』



今日はクィディッチの試合がある日だ。
ハーマイオニーの行動を止めるつもりのないアリサは、少しでも痛みがなくなるように丁寧に薬を塗って包帯を巻いた。



『先生。あの後考えたんです。私は、やっぱり友達が怪我をするのを分かっていて見てるだけなんて出来ません。』
「それで自分が怪我をしてもか?」
『はい。それで助けられるなら…』
「自分を助けたことで傷ついたと知るやつの気持ちは考えないのかね?」
『それも考えました。でも、そこまで考えていたら行動なんて出来ません。私は、私がやれる精一杯のことをしたいんです。』
「…随分と自分の力を過信しているようですな。」



スネイプの容赦ない質問にも冷静に答えていく。



『いいえ。私はまだ弱いです。使える呪文も少ないし、調合出来る魔法薬も限られてる…だから!スネイプ先生に修行をつけて欲しいんです。』
「それなら、もうしているだろう。」
『呪文の方もです。スネイプ先生なら信頼できますし、お強いですから…。』



真っ直ぐ自分を見つめる瞳に、スネイプの中の人物と重なる。自分の弱さ故、傷つけてしまった女性を。



『やはり、ダメでしょうか…』
「生徒だからと容赦はしない。」
『じゃあ!』
「その修行とやらをつけてやろう。ただし、調合が成功した場合に限る。」
『それでも十分です!ありがとうございます!』



アリサは深くスネイプにお辞儀をして執務室を出て行った。
スネイプは深く椅子に座りなおし、なぜ許可してしまったのか…自問自答していた。



「(なぜ、あのタイミングでリリーが出てきたのだ。あいつと接していると調子が狂う。)」



少しずつスネイプの中でアリサという存在が大きくなっていることに、本人は気づいていない。
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