リクエスト

□会わすな危険
2ページ/15ページ



夜食と言えるほど立派な物じゃないけど
外食やコンビニだけだと栄養偏るし、
宮城の事だから仕事に夢中でちゃんと食べてないだろう。


サッと行ってパッと渡せば邪魔にはならない。
イメトレもしたし、大丈夫だ。


大学の正門が見えたと同時に気付いたのは、



「あ」



正門前で携帯を見ている黒髪の背の高い人。
あの人って、


「あ、高槻くん」


やっぱり。
助教授と付き合ってる草間さんだ。


「宮城教授に会いに?」


「ずっと泊まり込みで仕事してるから…心配で…」


「少しでいいから会いたいですよね」


「………うん」


やっぱり草間さんはすごいな。
俺の本音を見抜いて自然に答えてくれる。

そっか、
草間さんも助教授に会いたいんだ。


「俺もヒロさんを一目見たくて差し入れ持って来たんですけど、
さっき電話したら『今日が勝負だ』って言ってたから
邪魔したくないので会わずに帰ろうと思ってました」


「そうなんだ…」


じゃあきっと宮城もそうなんだな。
せっかく夜食持って来たのに…


「でも、今日が勝負という事は明日か明後日には帰ってきますよ」


「…うん。
じゃあ俺も帰る」


「途中まで一緒に帰りましょうか。
あ、せっかくだからこれ食べて下さい」


草間さんが薄い黄色の紙袋を差し出してくる。



「え、でも」


「甘い物は苦手ですか?」


「ううん」


「俺の職場の近くにあるケーキ屋さんで、
マフィンがすごく美味しいと有名なんです。
家に持って帰ると賞味期限や製造年月日で今日来た事がバレちゃうので。

気を使わせたくないからヒロさんにも宮城教授にも内緒にして下さい」



「あ、じゃあこれ」


「え?」


「俺も宮城に夜食持って来てて、
お返しと言うのも変だけどよかったら…」


「ありがとうございます」


宮城に会えないのはすごく残念だったけど、
草間さんのおかげで帰り道も楽しかったし元気付けられた。


そろそろ帰ってくるかもしれないならもう少しだけ我慢してよう。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ