小説エゴイストA

□一年の計は元旦にあり
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「けっこう人がいっぱいですね」



初詣に向かう途中、周りを見渡しながら野分が言う。


こいつなら四方八方が見えるからなおさら前方の混み具合いがわかるのだろう。



「はぐれたら大変ですよ」


とバレバレの理由をつけて俺の手を握る。



背の高い奴には定番の『どこにいてもわかる』こいつとははぐれられる気がしない。



「いい歳してはぐれねーよ」


言った所でどうせ聞かないんだよな…


それに、徐々に増えていく人の波をかきわけて進んでいるから
手を繋いでいるようには見えないので本気で振り払おうとは思わない。
まぁ、それを見越しての行動なのだろうけど…



神社へ続く石段を登りきると、ここで新年を迎えたと思われる人たちで賑わっていた。


澄んだ冬の星空と新年の始まりと野分の手の温かさと…



特別な事は望まないからこの日々が続けばいいなぁと参拝の行列に並びながら思っていると


「ヒロさんは何を願いますか?」



と、ちょうど良すぎるタイミングで野分に聞かれたから



「この日々がずっと続けばいいな…と……思って///」



素直に答えてしまった。



「ヒロさん!俺も同じ事を思ってました。
この先何があっても絶対この手だけは離したくないなぁと思ってたんです!」



満面の笑みで言ってくる。
相変わらず直球ど真ん中ストレートだな。



「あ、ヒロさん。俺たちの番ですよ」



姿勢を正して一礼をする。
賽銭を入れて、鈴を鳴らして、手を合わせ目を閉じる。




さっきの願いは俺の努力で叶う事だ。
野分みたく、もう少し自分の想いを口に出せるように…



「ヒロさんとずっと一緒にいれますように!!」


「わざわざ口に出すな!!///」




俺の目標は新年開始10分で総崩れだ…

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