リクエスト
□「好きだから」それ以外の理由はない
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今さら気付いた事だけど、
料理レシピのサイトはだいたいが「料理が出来る人」用だと思う。
『適量』がどれくらいかもわからないし、
『小口切り』や『いちょう切り』という単語が出る度に
意味を調べる俺にはハードルが高いと思う。
「初心者向け」を見ても全然わかんなかったし。
だから、まずは本当の基本を覚えなきゃと本屋に来たけど、
結局ここも種類が多くてどれを選べばいいかわからないな…
「こちらがお弁当の本を取り扱っているコーナーです。
キャラ弁ですと、こちらやこちらが人気ですね」
一冊ずつ基本の料理本を手に取る俺の隣に店員が誰かを案内してきた。
お弁当か…
キャラ弁なんて今の俺には到底無理だな…
「あぁ、ありがとう」
聞いた事のある声。
顔を上げると、
「ではここにある本を一冊ずつもらおうか」
「え?一冊ずつですか?」
「この本と、この本以外は郵送してもらえるかな」
この買い方が当然だという雰囲気の宇佐見先生と
困惑している店員のお姉さんが真横に立っていた。
「少々お待ち下さい」とお姉さんが走り去る。
「おや」
「こ、こんにちは」
間に誰もいなくなって宇佐見先生が俺に気付いた。