リクエスト
□今回だけは許してあげる
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「宮城教授、これ編集終わったので確認お願いします」
「おぅ、…けっこう片付いたか」
「そうですね。
後は追加の文献の校正チェックして
フォルダに入ってる資料一覧とそこの書類を照合して先方にメールして…
今日中には仕上がりますね」
「そうか」
散乱している資料とリビングテーブルに無造作に積まれているファイル。
仕事とはいえ、こんな場面を忍に見つかったら怒られるだろうな。
「それにしても研究会が予定より2週間も早まるなんてなぁ」
おかげで上條を巻き込んでの連日作業だ。
それでも間に合いそうになく、大学で作業をしていると他の仕事に上條が駆り出されたり
急ぎじゃない相手から電話がきたりと集中できないので家で仕上げをする事にした。
仕事を家に持ち込みたくないが今回は特例だ。
「関西の大学から急遽研究会に出席したいと連絡があったんですよね。
終電までには終わると思うので何とかなりそうですよ」
「いや、送ってくから」
「いえ、ただでさえ高槻くんのいない中お邪魔してるのに
送ってもらうのは更に悪いので…
今日は高槻くんは?」
「オーストラリア留学時代のクラスメイトが10人くらい日本に来る事になって
『日本の文化を知りたい』とリクエストされて修学旅行に行った」
「修学旅行?何か懐かしいな。
やっぱり定番の奈良・京都ですか?」
「日本人もいるけど外国人もいるから定番がいいだろう、
って事で奈良・京都と広島にも行くらしいな」
「いいなー、旅行かぁ」
「彼氏とは旅行に行かないのか?」
「いや、あの、あいつはアレですから!///
シフトもアレだし旅行自体アレだし///!!」
要は行きたいんだな…
「で、高槻くんはいつお戻りに?」
照れ隠しのあまり、とても丁寧な口調で手元の書類を纏めながら聞いてくる。
「今日戻ってくる。
終電かその前の電車だな」
「じゃあそれまでに仕上げますか」
「そうだな」
上條を送った帰りに忍を迎えに行けるよう、
今は目の前の仕事を片付けなければ…
再びキーボードを打つ音と書類にペンを走らせる音だけが響いた。