小説エゴイスト@
□「好き」って言える。言ってもらえる。
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ーそれは突然だった。
「先生の好きな人って男の人ですか?」
「……えーと…君は」
「経営学部3年の川村です。
先生の講義は受けていないのでお話をするのは今が初めてです」
「…あぁ、そうか」
どうりで見ない顔だと思った。
「最初の質問に戻っていいですか?先生の好きな人は男の人ですか?」
…こういう場合何て答えたらいいんだ?
世間的にも俺の立場的にも「違う」と答えるべきだろう。
でも、野分を否定したくない。
「何を急に?」
「先生、先週末に東町にいませんでしたか?
私の兄がそこに住んでて、車で送ってもらってる時に見かけました」
……東町…行ったな。
野分が“先月退院した子供に、病院にいる子供たちからプレゼントを預かった”から
用事が済み次第待ち合わせて飯に行こう、って駅で待ち合わせた。
隣の隣町の外れだし、一戸建ての住宅街で遊びに来る場所じゃないし、
帰る頃には夜だったから知り合いに会う事はないだろうと油断してた。
でも、手つないだりイチャイチャはしてないぞ。
「駅前を通った時に車から先生らしき人が見えて…
男の人と一緒だったけど友達って雰囲気じゃなくて…
幸せそうに見えました」
「///………」
どうする?
認めてしまう?
いや、相手は生徒だぞ。
……ごめん野分