小説エゴイスト@
□スレ違い
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休みの日でも8時前には起きる。
野分が帰ってるかもしれないから。
リビングに気配はなく、部屋を覗くとやはり誰もいない。
テレビ台の隅にある卓上カレンダーを確認する。
夜勤の文字と横に書き込まれている時間に二重線が引いてあり、書き直されている時間にも再び二重線。
最終的に夜勤の文字にも二重線が引いてあり全く役に立ってない。
何にしてもどうせ今日もいないんだ。
テレビをつけるとワイドショーで芸能ニュースを報じていた。
有名な映画監督と映画出演を機に売れっ子になった女優が離婚したらしい。
『映画出演の際はほぼ無名の新人でしたからね。
今じゃ歌手活動やドラマも立て続けに決まってますから』
『監督もハリウッドを視野に入れた活動をしてますし、
FAXのコメント通りスレ違いが続いたんでしょうね』
ーお互いに多忙を極め、スレ違いの続いた結果、それぞれ自分の道を歩んで行こうと話し合いましたー
スレ違いは別れの理由として成り立つのだろうか?
だとしたら俺達はとっくの昔に終わっている。
この女優だって監督に認められたくて追い付きたくて努力したんじゃないのか?
「寂しかったんだろうな」
努力が報われても相手に伝えられなきゃ意味がない。
一緒に喜んでくれなければ虚しいだけだろう。
逢えなくてスレ違ったんじゃなくて気持ちを伝えなくなってスレ違った…
俺は野分を応援し続ける事ができるのだろうか?
医者になって、より多忙になっても大丈夫なのだろうか……
ヤバい。
落ち込んできた。