火の狭間
□第五章
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29.サバイバル
震えるナルトは、アンコを見れないでいる。
「!!」
殺気を感じ、クナイを再び出したアンコは、後ろを振り返った。
蛇のように長い舌をした女だか男だか分からない人間が立っている。
「クナイ…お返ししますわ…」
「わざわざありがと」
笑顔で返すものの、二人に何とも言えない空気が流れ、ナルトは思わず汗を垂らした。
(な…何よこの試験官…はっきり言ってヤバい!!)
ナルトの隣にいたサクラも、冷や汗をかいていた。
試験官とクナイを返してきた者の二人のやり取りが終わると、いよいよ試験の本題に入っていった。
受験者全員には試験での死亡に関する同意書が配られた。
「早い話、極限のサバイバルに挑んでもらうわ」
「サバイバル?」
アンコの説明はこうだ。
演習場の森の中央にある塔に、「天の書」「地の書」両方を持ってチーム全員で、120時間以内に行くことが合格条件。
(26チーム中半分が天の書、もう半分が地の書ってことかぁ…)
「森は野生の宝庫。食料は自給自足よ!」
「え"ぇー!!」
真っ先に反応したのはチョウジだった。
「ただし、人喰い猛獣や毒虫、毒草には気をつけて。それに、13チーム合格なんてまずありえないから」
行動距離が日に日に長くなる、回復に充てる時間は逆に短くなる、そして辺りは敵だらけ…
「…つまり、巻物争奪で負傷する者だけじゃなく…コースプログラムの厳しさに耐え切れず死ぬ者も必ず出る」
ゴクッと受験者は唾をのんだ。
そんな受験者に構わず、アンコは説明を続ける。
「続いて失格条件について話すわよ!」
アンコが示した失格条件はこうだ。
一つ、時間内に天地両方の巻物を塔まで全員で持ってこれなかったチーム。
二つ、班員を失ったチーム。又は再起不能者を出したチーム。
「ルールとして途中のギブアップは一切無し。5日間は森の中!そして…巻物の中身は塔にたどり着くまで決して見ぬこと!」
「途中で見たらどーなるの?」
「それは見た奴のお楽しみ!」
意味深に言ったアンコは、信頼性を見るためよ、と続けて補足した。
「説明は以上。同意書三枚と巻物を交換するから…その後44個のゲート入口から一つを決めて、一斉スタートよ!…最後にアドバイスを一言。
―死ぬな!」
受験者は皆、さらに真剣な面持ちになった。
なまえやナルト達も、きつく口を閉めた。
アンコの説明が終わり、受験者達は各班巻物を受け取り、指定されたゲートに着いた。
各班の誰が巻物を持っているのか。それはその班の者しか知り得ない。
周りが全て、敵なのだ。
「サバイバル…か。」
「…フン、怖じけ付いてんのか?なまえ」
「少しね。あんたこそどうなのよサスケくん」
「フン、さあな」
開始の合図をそれぞれが待ち望んでいた。
そして、アンコの合図が放たれる。
「…これより中忍選抜第二の試験!開始!!」
各ゲートが開けられ、忍び達は一斉に飛び出して行く。
ナルト達第七班も、演習場内に足を踏み入れた。
「よっしゃあ!!行くぞ!!」
ナルトの威勢の良い声が響き、第七班の戦いも、その幕が開けられた。