狭間

□二話
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父さんの服のセンスは素晴らしいね、さすがモテる男は違うよ
愛人があの人には何人いるんだか…
そんな事をリヴァイさんに服を渡しながら思った。
すると愛人で思い出したくもない女の顔を思い出し、慌ててその顔を頭から追い出した。
私の表情がどうか変わっていませんように
しばらくテレビを見ながらぼーっとしていたらリヴァイさんがお風呂から出てきた
ベージュのチノパンと黒に近い紺色のブレザー、父さんやっぱセンスいいな。
さすが筋肉質で顔もかっこいいので様になっていた。

「お似合いですよ」

「お前は服屋の店員か…おい、早く出かけるぞ」

そう言ってさっさと玄関に向かってしまった。
やっぱり、少し強引な人だ
私はリヴァイさんを追いかけた。

正直に言うと、私は自分の住んでいる場所を見せたくなかった
ここは裏の町。掃き溜め。ここらへんはいかがわしい危ないお店がゴロゴロしている

「こういう所は、どこにでもあるもんだな」

リヴァイさんはどこか遠い目をしながらそう呟いた

「…そうですね。本当によくできてることに
一本道を過ぎると…なんでもない街になるんですよ」

そこはもう閑静な真面目な住宅地になっていた。
本当によくできてる。…こういうのはなんだか気色が悪くて嫌いだ
大通りに出た。夏なのに今日は涼しいせいなのか夏休みのせいなのか人通りが多かった。

「あれが、駅ですね。新幹線っていうすごい早い電車が走ってます」

「あれはコンビニですね、年中無休の24時間営業だから何か無くてもすぐ買えますよ」

「これは信号です。青だと渡れて赤だと止まれです。歩行者はこっちの四角の信号機を見るんですよ」

なんて説明しながら歩いた。リヴァイさんは肯くだけだったが、信号機の説明をした時に口を開いた

「…このさっきから走っていく鉄の塊はなんだ。」

アゴをしゃくって目の前で信号待ちしている車を示した

「車ですね。馬がすごい進化した感じで移動手段の一つです」

「便利なもんだな」

その声はどこか苛立ちを含んでいたが、顔は逆光になっていてみえなかった
それからはしばらく黙って歩いた。

「…どこに向かっているんだ」

「あ、すいません。言ってませんでしたね…。もう少し歩いた先にショッピングモールがあるんでそこに行きます
途中で寄りたい場所があったら言ってくださいね」

「ああ」

それきりまた黙ってしまった

「…ところで、どうしてここに来てしまったんですか」

「それが分かってたら楽なんだがな
どうして意識を失ったのか、意識を失う前何をしてたのか全く分からねえ」

「そうですよね…」

リヴァイさんを見上げたがやっぱり逆光でその表情は分からなかった
するとリヴァイさんがこっちを向いた

「お前は、どう思う」

「私ですか?
よくある物語だと、何か扉とか不思議な空間を通ると異世界になるので…
そっちの世界の壁が鍵かなって思います。未知の場所や未知のものが異世界に繋がっていて、それにリヴァイさんが遭遇したことでこんなことになってしまったんじゃないかと
すいませんね、なんの根拠もない妄想で」

言葉にしながら考えたが私の考えはとても浅はかで具体性に欠けた

「いやそうでもない…壁、か。
そう考えると俺が立体起動装置をつけていた理由にもなる」

そう言って前を向き一人考え込んでしまったようだった。
私は横に並んで歩いた。
横顔はとても鋭い表情で、大人で。大人の気配にすこしどきりとした。
素敵な大人の男の人と並んで歩く、それは慣れない事だけどやはり嬉しかった。

ショッピングモールに着くとまず服を買った。
無難な感じのを適当に選んでホイホイ買っているとリヴァイさんがじっと何かを見ていた
その服は…すごくホストでチンピラでちょっと柄が悪そうだった
けど、服を持ってリヴァイさんに合わせてみると

「すごい…似合いますね。けどすごい柄が悪いです」

「うるせえクソガキ」

頭を叩かれた。
けれど、私はそれもカートに入れた。だって似合うんだもん。
黒のスーツと赤いシャツ。うん怖い。怖さ5割増し。
それからタオルとか洗面用具とか食品を色々買った。さて帰ろうと思ったとき

「待て。」

「ぐぉ…!」

そういわれて首を引っ張られた
そしてリヴァイさんの視線の先には…掃除用具があった。
激お○くんや、カビ○ラー、たわしなどをひょいひょい籠に入れて行く
もしかして、きれい好き?
そうその時は思ったがその認識は甘かったことを私は後で実感する事になる…
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