+小説+
□息子の初恋
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小学五年生春
父さんが再婚した
再婚って言っても
俺を生んですぐに消えたから
結婚してないから
再婚とは言わないかもしれないけど
とりあえず母親が出来た
…若ッ…!!
どうせ金目当てだろ…
社長だし…
ったく…
父さんはバカか…
「…よろしくね?
悟くん…♪」
可愛い笑顔
人懐っこそうな笑顔
どうせコレも父さんの前だけだろう
物心ついた時から
俺は世の中を知っていた
無邪気だった頃なんて覚えてない
小学校に入るときには
現実を知っていた
テレビみたいなヒーローは居ない
魔法や奇跡なんて起こらない
人なんて騙して騙されて…
「お帰りなさい♪」
玄関を開けると
奥から昨日の奴が出てきた
昨日と変わらない
笑顔を浮かべて
何だよ…
息子にも媚売るのか…
家でだらけて
金使いたい放題使って
家事は息子に押し付けて…
「…何やってんだよ…」
つい
言葉が漏れた
「あ、ごめんなさい…
私に触られるの、嫌だった…?」
ビクッとする女
変な奴
「ごめんなさい…
これから悟君の分は…」
「ありがと」
「え…?」
「家事」
「…うん♪」
ほっとしたように笑う
「名前は?」
「あ、沙織です♪」
「沙織、か…
歳いくつなの?」
「…まだ、17…
頼りないけど…
頑張るから…」
俯く沙織
何でこの人は
何のためにこの人は
家に来たのだろう?
夕飯は沙織の手作り
手作りなんて…
いつ振りだろう…
父さんのお母さんが作ってくれたのを
食べた事はあるけど…
それ以外は初めて…
「美味しいよ」
「あ、ありがとう…」
嬉しそうに
でも控えめに笑う沙織
本当、変な奴…
「…悟くん…?
美味しく、ない…?」
「美味しいよ」
「…良かった…♪」
俺に向けるのは安堵の笑顔
何か、ムカつく…