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□届かぬ想い・届いた想い
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俺はケン

幼馴染のレイカが
ある日この町に
帰ってきた

レイカは小学生の六年間を
海外で過ごしていた
レイカは留学だと
言っていたが
本当の理由を
俺は知っている
レイカは
病気だったのだ
戻ってきたということは
治療は成功したのだろうか?
聞きたくても聞けない
レイカは
俺が知っていることを
知らないのだから

戻ってきたレイカは
少し大人びていた
俺は一人
取り残されてしまったような
気がした
そんな俺に
レイカは「久し振り」と言った
俺はそれが嬉しかった
俺もただ「久し振り」と返した

レイカが戻ってきて
約三年が経った
俺達はお互いに
隠し事をしない
親友になっていた

でも俺には
言えない事が
一つだけあった
それは
レイカが
好きだという事

ただ自信が無いのもある
でもそれ以上に
言えない理由があった
レイカには
好きな奴が居る
そいつは
俺には届かない
レイカですら
いや
世界中の人間が
届かない奴だった

レイカが戻ってきて
一年が過ぎようとしていたとき
俺はレイカに聞いた
何故髪を切らないのか、と

以前のレイカは
邪魔だからといって
すぐに切っていた

レイカは
「彼が伸ばしてくれと言ったから」
と言った
だから俺は
「好きな奴が居るんだ」
と言った
そうしたらレイカは
悲しそうに
寂しそうに
「もう居ないよ」
と言った

そいつは
もう『この世界には』居ないのだ

俺はただ
そいつが
レイカの中から
消えるのを待った
でもそいつは
なかなか消えなかった

それからまた
約三年
俺は高校を卒業した
レイカも
同じ高校に
通っていた
でも
一緒には
卒業は出来なかった

数ヶ月前に
レイカは卒業して
旅立った

みんなが別れを
悲しんだ
みんなが別れで
泣いた

でも俺は
泣かなかった
悲しくなかった

レイカはきっと
あいつと再会できただろう
レイカは
運動は出来ないけど
綺麗だし
頭も良いし
優しいから
そいつと幸せになれただろう
だから俺は
悲しくない


…ただ…


寂しさと

少しの嫉妬と

思いを伝えられなかった
後悔が

胸の中に残った



俺の思いは
届かなかった
これから届くことも無い
でも
レイカの思いは
きっと届いた
だから俺は
それで良いことにした


END

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